三部構成になっており、
最初はミュラーの「山の羊飼い」、
第2部がフォン・シェジの「深い悲しみ」、
そして第3部では、再びミュラーの「春への思い」という詩をテキストにして、ストーリー化されています。
第1部では、小高い山の岩の上に立って、遥か彼方の地へと去って行った愛おしい女性を懐かしむ、羊飼いの青年の憧れが…。
第2部では、この世での希望を失くした青年が淡々と語る、諦観とも思える心境に、愛おしくなるような悲しみが漂います…。
そして第3部では、再び巡り来る春へと一縷の望みを繋ぐ青年の心境が、儚く美しく歌われます…。
不治の病に苛まれ、余命いくばくもないことを悟ったシューベルトは、
彼岸での幸せを夢見ていたのでしょうか…。
最晩年のピアノソナタや室内楽作品の終楽章と同様に、儚さに胸が締め付けられるような作品です!
エントリーするディスクは、キャスリン・バトルのソプラノ、カール・ライスターのクラリネット、ジェームス・レヴァインのピアノによる、1980年代後半の録音。
当時、国内の某ウィスキー会社のCMに登場し、
その美貌と、
どこまでも透明で、まっすぐに伸びていくような澄み切った美声で、一大ブームを巻き起こしたバトル!
その当時に収録されたこのディスクは、そんな声の美しさに加えて、表現力の素晴らしさに心打たれる、極上の出来栄え!
牧笛を思わせるクラリネットの豊かな表現力に加え、
曲の構成力をわきまえた、レヴァインの見事な演奏は、
この12分に及ぶ歌曲を、見事にまとめ上げていると感じられます。
牧歌的で、広大なオープンエアを髣髴させる第1部。
テンポロ緩めて、しみじみと悲しみを吐露するような第2部の美しさ!
再びオーピンエアへと解き放たれたものの、美しくも儚ない悲しみが漂う第3部。
シューベルト最晩年の作品を愛する方々には、ぜひともご一聴頂きたい演奏です!