音楽好きな家族に囲まれて、早くからヴァイオリンやピアノ演奏に才能を発揮、
彼自身も音楽の道を志します。
しかし、実業家として身を立てるように説得する父親と意見が対立。
フロリダでオレンジ栽培を学ぶという名目で渡米、
当地でピアノを購入し、仕事と同時に、音楽の勉強も併せて行っていました。
管弦楽組曲「フロリダ」は、帰国後にそんな日々を思い起こしつつ書かれた、初期の作品!
後年、病に侵され不遇な生活を送った時代の作品とは全く異なり、幸福感に満たされたもので、
新婚旅行のキャンペーンにでも使えそうな、美しい観光用写真のような作品。
暑さがぶり返してきた今日のような日に、
部屋で扇風機の風に心地良さを感じつつ、
まどろみながら聴くには最適の、ストレスフリーな音楽です。
【第1曲:夜明け〜ラ・カリンダ】
冒頭部のコールアングレ(だと思うのですが)の、きっぱりと澄んだ旋律の響きが、
雲ひとつないフロリダの朝の空を、
それを装飾する木管楽器の響きが、
鳥たちの声を髣髴させる爽やかさ!
中間部の舞曲は、
エネルギッシュさよりも、自然に溶け込んだ音楽という趣!
フロリダで過ごした懐かしい日々の、想い出なのでしょう…。
【第2曲:河畔に手】
川沿いのプロムナードを歩くような、ロマンチックな趣を湛えた作品。
ハープが陽の光を浴びて輝く川面を、
フルートの音色が、時折梢を揺らせる涼風を…。
【再3曲:夕暮れ】
哀愁と郷愁を帯びた曲!
周囲は、次第にモノクロームな世界へと変化していく、味わい深い情景描写…。
激しく高揚していく舞曲は、ロマの情熱を湛えた、ハンガリー舞曲風…?
【第4曲:夜に】
コールアングレが、穏やかな夜のおロずれを、
ホルンの響きがまどろみの世界を醸し、
ロマンチックな時が過ぎていきます!
フロリダの描写というよりも、
帰国後にアメリカを想い出すディーリアスの、心象風景が描かれているのでしょうね。
順風満帆な生活を送る若き日のディーリアスの、幸福感に満ちたメモリー!
後年の不遇な生活を知る者にとっては、人生って怖いものだと、心底思います…。