前年にジュルジュ・サンドとの破局が現実のものとなり、
それ以降は、極度の鬱状態に陥ったと言われる晩年のショパンですが、
この2曲には、それまでの多くのノクターンとは異なり、甘美さは極力削ぎ落とされ、
怒り・失意・悲しみ・孤独などの交錯した雑多な心境が、五線譜に昇華された、珠玉のような作品集と映ります…。
今日エントリーするアラウの演奏は、まさにそういった観点から捉えられた、奥深い味わいを有する演奏!
このディスクを聴くようになってから、ショパン晩年の強く純な生きざまに、思いを馳せるようになりました!
繊細かつ雄大なアルペジォで開始され、主題が転調を繰り返しながら、揺蕩ように進行するop.62-1(第17番)は、
過ぎ去りし日々を回想するかのような趣の、清らかな美しさが感じられる音楽。
決して激情に走らず、淡々と慈しむように語り紡がれるアラウの音楽は、
美しい音色で語られる演奏とは一線を画し、聴く度に味わいが増してくる素晴らしいものだと思います。
op.52-2(第18番)は、ショパンの「辞世の曲」とも解釈できそうな作品であり、演奏。
あらゆる感情が削ぎ落とされ、ただ淡々と過ぎ去りし日々を振り返るようなアラウの演奏を聴くと、
祖国ポーランドに戻ることも叶わず、
愛妻サンドにも去られて、天涯孤独の身となったショパンと、
旅に病んで 夢は枯野を 駆けめぐる
そんな辞世の句を読んだ、松尾芭蕉の最期とが重なって響いてきます。
大変に感動的なアラウのop.62の演奏です!