最近聴いたCD

ベートーヴェン:ピアノソナタ第5番

マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)


1798年、28歳のベートーヴェンは、ピアノソナタ第5〜7番(op.10-1〜3)や、第19〜20番(op.49-1〜2)の5曲を作曲しました、

若い頃、「楽聖」と神格化されたベートーヴェンのピアノソナタ全曲を、

「鍵盤上の嗣子王」バックハウスの演奏を最高のものと信じこんで、

高邁・崇高な精神を聴き取るべく、一心不乱に傾聴したものでした。


しかし40歳を過ぎた頃からは、

ドイツ精神主義の衣を払拭して、曲ごとにベートーヴェンの人間的な側面を捉えた解釈、

例えばブレンデルやアシュケナージの演奏などに、親しみを覚えるようになりました。

今日エントリーする第5番を、アシュケナージの演奏で聴くと、

ベートーヴェンが好意を寄せた愛らしく親しみ易い、ごく身近な女性像を描いた作品かと思えるのですが…。

ところが、この曲をポリーニ盤で聴くと…。


近年ポリーニは、ベートーヴェンの初・中期のソナタをほぼ全曲録音しており、当初は大いに期待をしていたのですが…。

ところが、あまりに美しく、唖然とするほどに完璧で、

私的にはそんなベートーヴェンの初・中期作品には、全くと言ってよいほど、面白みが感じられませんでした。


ところが今日は、この完璧な美しさを有した演奏が、心の奥深くに沁み入ってきます。

ポリーニが紡ぐベートーヴェンが思い描いた理想の女性像(?)が、

学生時代に盲目的に読んだ(後論、理解はできていませんが)、ダンテの『神曲』のベアトリーチェ像とダブるような感慨を抱きました。

彼の弾くソナタや協奏曲へのアプローチが、何となく理解できたようyに思えて、

あらためて彼のベートーヴェン演奏を聴き直してみようと思った次第です!

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