精神的に強いダメージを被ったようで、
この時期の作品には、逃げ場のない暗う雰囲気を感じるのです…、
しかしながら、1911年に完成された交響曲第4番は、
そんな個人的な苦痛を、祖国フィンランドの苦難の歴史へと重ね合わせ、
フィンランド国民の強靭な精神力を感じさせるまでに昇華させた内容!
様式的に充実しているだけでなく、そんな奥深い内容と、
そこから這い上がろうとする強靭な精神力が巧まずして伝わってくる、素晴らしい作品と感じています。
今日エントリーするのは、C.ディヴィス指揮するロンドン交響楽団の演奏…。
しみじみとした味わいの中に、苦難を克己する感動が聴き取れる、
比肩する作品が思い浮かばないほどに素晴らしい演奏だと感じています!
【第1楽章:Tempoi molto moderate、quasi adagio】
低弦が、地の底から湧き上がる唸りのような、尋常ならざる不気味さを漂わせる中、
チェロが、救いのない悲しみを歌う、大変に厳しい冒頭部!
様々な不安や悲しみが虚空を漂いつつ、
時折希望が仄見えるような展開部や再現部!
解決を見いだせないままに、突然消え去るように第1楽章は終わります…。
【第2楽章:Allegro molto vivace】
開始部の民族舞曲風の音楽は、病に蝕まれて夢の中を漂う、
そんな幻想曲のような儚さが感じられます。
ベルリオーズ「幻想交響曲」の第2楽章をふと思い浮かべるのですが、いかがでしょうか…。
【第3楽章:Il tempo largo】
病に蝕まれた不安な心が、
同じように外敵から侵略され続けた祖国フィンランドへの愛国心へと止揚されていく、屈強な精神力と同時に、
壮大なロマンが滲み出るような、感動的な楽章です…。
私的には20世紀に書かれた音楽の中でも、最高の感動を呼び起こす作品であり、演奏だと、信じています!
【第4楽章:Allegro】
虚空を彷徨う、儚い舞曲。
静寂の中に響く木管の音色が鳥たちの鳴き声を、
グロッケンシュピールの響きは弔いの鐘の音を…。
寂寥とした自然の中へと、生きとし生けるものが収束されていく…。
シベリウスがこの曲を書いてから百年後の今日にも通じるま高いる、普遍性を有した作品です!
ディヴィス?ロンドン交響楽団によるこの演奏!
是非とも御一聴されることを、お薦めします!