私自身、チェロの奏でる輝かしさ、エネルギッシュさがしんどく感じられて、
全6曲の中では、最もなじみの薄い曲でした。
ところが、今日久しぶりに訊いたロストロポーヴィッチの演奏は、
一切の気負いが削ぎ落とされつつ、則をわきまえた闊達さで演奏されているのですが、
しかしバッハという存在の偉大さが、ひしひしと伝わってきます。
ロストロポーヴィッチの演奏については、作曲者の個性を飛び越えた自己主張の強さに、辟易することも時にあるのですが、
バッハの無伴奏、とりわけこの第3番を聴いていると、
バッハという偉大な存在の掌の中で、
創造主に忠実に献身するしもべのひたむきさが伝わってくるように感じられて、強い共感を覚えます。
【第1曲:プレリュード】
冒頭から感情移入を廃し、力みなく、流れるように奏されますが、
曲の進行に伴って、次第に心の充足感が高まってくる、素晴らしい演奏です!
【第2曲:アルマンド】
16世紀にフランスで生まれた、中庸の速度のドイツ風舞曲。軽やかに、
自在に奏されるこの演奏からは、清明な感動が伝わってきます!
【第3曲:クーラント】
この軽快な舞曲からは、懐かしい想い出が、走馬灯のように浮かんでは消えていく、
そんなはかなさが漂います!
【第4曲:サラバンド】
提示された問いかけに、静かに思いを巡らすような、瞑想的な雰囲気を湛えた音楽!
【第5曲:ブーレ1・A】
愉しげな第1ブーレに漂う懐かしさ!
過去の想い出を噛みしめるように、ほのかに哀愁を湛えた第Aブーレ!
【第6曲:ジーグ】
力強く開始され、愉しげに盛り上がるさまは、バッハの音楽としては珍しく、民族的な高揚感が…。
無伴奏第3番の魅力に、初めて気付いた演奏でした!