これらについてピアニストのアファナシェフは、自らのCDのライナー・ノートに、
「恥辱・苦痛・諦念・憂愁などに満たされた沈黙である」と、指摘しています。
中でも、今日エントリーするop.116「7つの幻想曲」を聴くと、
ピアノの音色そのものに感情が込められているというよりも、
まるでピアノから解き放たれた響きが、空間に漂う静寂へと溶け込み、
その余韻が大きなウェイトを占めて、聴き手のインスピレーションを喚起する、
そんな霊感に溢れた小品集のように思えるのです。>p>それは、これまで誰にも言えずに鬱々と悩み苦しんだ、ほろ苦い感情の吐露なのでしょうか…。
アファナシェヅがライナーに記したような感情が、時に張り裂けんばかりに、時にしみじみと、心に伝わって!
第1、3、7虚目の「奇想曲」では情熱的に、
第2、4、5、6曲目の「間奏曲」ではしみじみと、心情が吐露されますが…
年齢のせいでしょうか、個人的には、「間奏曲」の方に、強い魅力を感じます…。
【第2曲:Andante】
喪失感でぽっかりと穴があいた心を、
諦めることによって癒そうとするような、
如何にもブラームスらしい諦観が漂う音楽です…。
【第4曲:Adagio】
憧れることによって心を癒す孤独な心境が、
雨のそぼ降る夜に、抒情的み語られる、
ノクターン風の音楽…。
【第5曲:Andante con grazia】
気持が定まらないようなこの曲は、
若き日の心の逡巡を表現しているのでしょうか…。
これもいかにもブラームスらしい音楽です!
【第6曲:Andante teneramente】
崇高なものを拝するような穏やかな感情が、中間部では愛おしさへと変化していく、
誰もが抱いたであろう、青春の甘酸っぱい想い出が蘇るような、
切なくも美しい音楽です!
特に4曲の間奏曲での、アフナシェフの解釈の見事さが際立った、素晴らしい演奏!