仄暗く深い情念を表現するオーケストラと、
揺れ動く心を表出するピアノの響きが大変に印象的な作品。
自らがピアノを弾く予約演奏会のために書かれたものですが、
聴衆受けを一切狙わず、妥協なしに書き上げられたとされるこの曲は、
彼の数少ない短調の作品中、さらには名作揃いの彼のピアノ協奏曲中でも、屈指の名作と言われています。
特に今日エントリーするハスキルのピアノと、マルケヴィッチ指揮するラムール管弦楽団の演奏を聴くと、
冒頭に書いたような異様な雰囲気に包みこまれ、
歌劇『ドン・ジョバンニ』の、地獄落ちの恐怖を髣髴させる、
異様な世界へと、惹き込まれていくようです…。
【第1楽章:Allegro】
オーケストラが醸す異様なパトスの世界の中を、哀愁にみちた美しいピアノが彷徨う、
大変シンフォニックな印象を受ける、深い内容を有した楽章!
マルケヴィッチが紡ぐ、清明で鋭い響きが、とりわけ劇的な雰囲気を来燃します。
【第2楽章:Larghetto】
冒頭から、淡々と夢見る孤独な心心境がピアノによって紡がれる第2楽章。
オーケストラが語りかけ、
それに応えるピアノ。
素朴なメルヘンの世界が垣間見れる、美しい楽章です。
【第3楽章:Allegretto】
終楽章は、刻々と変化していくる心の襞が、
変奏曲という形式で見事に表現された、気高さに満ちた音楽です。
全てが悲しみに蔽われているものの、
第3変奏でのピアノとオケのせめぎ合いでの力強い主張が印象的!
又、第4変奏ののどけさ、第6変奏での明るさからは、仄かな希望が垣間見えるのですが、
それ故に、劇的な緊張感をはらんだままに終わるコードの印象的なこと!
素晴らしい曲であり、演奏だと思います。