そのお礼として『大学祝典序曲』を作曲して、同大学に送ったことはよく知られています。
それと同時期の翌年夏、保養地バート・イシュルで併行して書き進められた『悲劇的序曲』は、
ブラームスが友人に宛てた書簡で、両曲を「笑う序曲」「泣く序曲」と対比していることからも、
双子のような作品と考えられています…。
『大学…』が「学生の酔いどれ歌のひどくがさつなメドレー」(伝:ブラームス談)であるのに対し、
今日エントリーするジュリーニ/ウィーンフィルの演奏で聴く『悲劇的…』は、
「泣き喚いたり大言壮語することなく、真面目に思い悩む学生の姿」が髣髴されて、
「なるほど、この2曲で、学生(或いは若者)の相反する側面を表現しているのか!」と、ふと思ってしまいました…。
私の所有するディスクの演奏時間を見ると、大概が12〜14分強くらいなのですが、
このジュリーニ盤は15分29秒と、極めて遅いテンポ…。
晩年になって、激しい感情移入によってテンポが極端に遅くなったバーンスタインっが、
同じくウィーンフィルを振った1981年盤と比べても、1分以上遅い演奏です!
表立った緊張感を漲らせることなく、
とりたてた感情移入することもなく、
ただ、淡々と楽譜に語らせているだけとも思えるこの演奏が、
忘れ難い深い感銘を、聴き手の心に刻み込んでいく、
そんな味わい深さを有した、超弩級の名演だと思いました。