最近聴いたCD

J.ブラームス:悲劇的序曲 op.81

カルロ・マリア・ジュリーニ  ウィーン・フィルハーモニー管


1879年、ブレスラウ大学の哲学科から名誉博士号を授与されたブラームスが、

そのお礼として『大学祝典序曲』を作曲して、同大学に送ったことはよく知られています。

それと同時期の翌年夏、保養地バート・イシュルで併行して書き進められた『悲劇的序曲』は、

ブラームスが友人に宛てた書簡で、両曲を「笑う序曲」「泣く序曲」と対比していることからも、

双子のような作品と考えられています…。


『大学…』が「学生の酔いどれ歌のひどくがさつなメドレー」(伝:ブラームス談)であるのに対し、

今日エントリーするジュリーニ/ウィーンフィルの演奏で聴く『悲劇的…』は、

「泣き喚いたり大言壮語することなく、真面目に思い悩む学生の姿」が髣髴されて、

「なるほど、この2曲で、学生(或いは若者)の相反する側面を表現しているのか!」と、ふと思ってしまいました…。


私の所有するディスクの演奏時間を見ると、大概が12〜14分強くらいなのですが、

このジュリーニ盤は15分29秒と、極めて遅いテンポ…。

晩年になって、激しい感情移入によってテンポが極端に遅くなったバーンスタインっが、

同じくウィーンフィルを振った1981年盤と比べても、1分以上遅い演奏です!


表立った緊張感を漲らせることなく、

とりたてた感情移入することもなく、

ただ、淡々と楽譜に語らせているだけとも思えるこの演奏が、

忘れ難い深い感銘を、聴き手の心に刻み込んでいく、

そんな味わい深さを有した、超弩級の名演だと思いました。

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