「そんな境遇に置かれても、このような明るい曲をかけるモーツァルトという人物は…?」という類の文章を読んだ記憶がありましたが…。
現在では、父親の反対を押し切ってコンスタンツェと結婚した翌年の1783年に、ウィーンないしはザルツブルグで書かれたとされており、
曲に纏わる神秘のヴェールは、どうやら剥がされたようです……。
今日エントリーする内田光子さんのピアノによるK.332!
余りにも有名なK.331「トルコ行進曲付」と比べると、それほどポピュラーな存在ではありませんが、
楽想の豊かさや内容の奥深さという点で、個人的にはK.331よりも好きな曲です!
【第1楽章:Allegro】
平易な旋律で開始され、次から次へと異なった楽想が提示されていきます。
後半部で繰り返される転調によって、めくるめく感動の流れと高ぶりが、美しくまろやかな音色で奏でられていく、幸福な音楽!
【第2楽章:Andante】
ゆったりとした福感に包まれた寛恕楽章。
美しいアリアと、それを彩るチャーミングなトリルの響き!そんな中、
ふと虚空漂う憂愁が、曲の美しさを際立たせます。
【第3楽章:Allegro assai】
一転して華やかに開始されるこの楽章では、対照的に哀愁を含んだ第2主題が印象的!
消え入るように終わる、印象的なコーダ部…。
内田さんは、ご自身の演奏したCDを聴く愛好家に対して、
「あるピアノ奏者が、ある日に弾いた演奏として聴いてもらえれば…」と述べられているそうですが、
私は、たまたま今日聴いた内田さんのK.332から、得難いほどの深い感動を受けることが出来ました!