最近聴いたCD

オットー・ニコライ:

歌劇『ウィンザーの陽気な女房たち』序曲

カルロス・クライバー  ウィーン・フィルハーモニー管


ウィーン・フィルの創設者オットー・ニコライ(1810-49)の代表作であり、

彼の名をドイツ歌劇誌上不朽のものにした歌劇『ウインザーの陽気な愉快な女房たち』は、

シェークスピアの同名喜劇を題材にしたもの。

そんな経緯を考えて、初演はウィーン国立歌劇場だと信じ込んでいたのですが、

1848年に指揮者として就任したベルリン国立歌劇場だったとは、「眼から鱗…」でした!

それはともかくとして、今日エントリーする序曲は、

1992年に創立150周年を迎えた記念すべきニュー・イヤー・コンサートで、創設者に敬意を表して演奏されたもの。

指揮は、カルロス・クライバーです!


彼が指揮する、歌劇「カルメン」のDVDを観た時にも感じたのですが、

聴衆が完全に鎮まるのを待って降り始めるのではなく、

そんなことには無頓着に、自分の間合いで振り始めているように思えたのですが…。

ニュー・イヤーの幕開けで演奏されたこの曲も、

拍手が終わり、未だ聴衆のざわめきが漂う中で、夜明けの冷涼な空気を思わせる弦の高音域を奏でる弦によって開始されますが、

その絶妙の間合いによって、聴衆は過度な緊張感を強いられることなく、

適度の緊張感とリラックス感う抱いたままに、

瞬時に冷涼な大気を全身で感じつつ、朝靄煙る、夜明けのウィンザーの街へと誘われていきます。


Andante moderateで開始される序奏部は、前述した雰囲気を湛えつつ、何かが起こりそうな予兆を湛えた、胸ときめくような鮮やかな演奏です!

Allegro vivaceの主部に入ると、クライバーンぽエンジンは全開。

当意即妙、変幻自在、かつ繊細な表現からは、

ユーモアやウイットに富んだウィンザーの女房たちの活き活きとした百態が、眼前に浮かぶように」展開されていきます。


指揮者は、求める表現をオーケストラから引き出すために、しばしば比喩的な言葉を使うそうですが、

クライバーは「いきなり握手するのではなく、先ず相手の産毛に触れてから肌に到達する感じで」と言うような表現で、感覚的にニュアンスの繊細さを伝えたそうです(岡田暁生著:「音楽の効き方」より)。

それに倣うと、「フレアスカートの裾が、そよ風になびくような」軽やかで繊細な音楽が、心地良く聴こえてくるのです…。

その他、随所に様々なインスピレーションが溢れた、素晴らしい演奏です!

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