そんな中でベートーヴェンは、作品番号が付けられた弦楽三重奏曲を5曲作曲しました(op.3、op.8、op.9-1~3)が、
作品番号からも分かるように、いずれも24~27歳にかけて書かれたものばかり…。
ウィーンでヴィルトゥオーゾ・ピアニストとして名声を博し、遮るもののない前途洋々たる未来が拡がっていた頃の作品でもあります。
今日エントリーする第1番は、1794年に作曲された6楽章構成の作品であり、
1788年に完成されたモーツァルトのK563の同編成のディヴェルティメントを意識したものなのでしょう…。
第1楽章から順にAllegro―Andante(Adagio)―Menuetto―Adagio(Andante)―Menuetto―Allegro と並べられた楽章構成(カッコ内はK563)は、
第2、4楽章が入れ替わるだけで、あとはK563と全く同じ配列になっているのは、
若き日のベートーヴェンのモーツァルトへの畏敬の念が垣間見れるようで、興味深いところです…。
【第1楽章:Allegro】
第1、2集第共に、順風満帆な青年ベートーヴェンの明るい心境が伝わってくるかのように、明朗で伸びやかな歌が伝わってきます!
【第2楽章:Andante】
新しい出会いを求めて、ドアをノックするような第1主題。親しみ深く挨拶を思わせる第2集第。舞曲のように活き活きとしたAndante楽章です!
【第3楽章:Menuetto】
最初は、初対面の挨拶のようにためらいがちに、やがて意を決したように近づいていく、初心な青年の心境をp感じさせるメヌエット楽章です.。
【第4楽章:Adagio】
親愛の情を示しながら、3つの楽器が互いに歌い交わす、幸福感に満ちた楽章です。
【第5楽章:Menuetto】
愉しげなメヌエット主題と、トリオ部でのヴァイオリンの晴朗な音色は、天上で囀る小鳥のように、自由闊達な美しさに溢れています。ズスケの演奏が秀逸!
【第6楽章:Allegro】
24歳の青年ベートーヴェンが、後年フーガに傾倒する兆しが感じられる楽章…。モーツァルトの熟成した筆によるフーガ楽章を思わせるように、果てしな晴朗な拡がりを意識しているように感じた楽章です!
若き日のベートーヴェンの面影を知る上で、興味深い作品の一ついだと思います。