組曲『イヴェリア』(コーカサスの風景第2番)
直ちに続編の作曲に取り掛かり、翌年にはほぼ草稿は出来上がったのですが、
その後しばらく放置され、ようやく初演にこぎつけたのは1906年…!
出版された楽譜には、副題として「コーカサスの風景第2番」と記されていたそうです。
尚、曲名の『イヴェリア』とは、現在のグルジア(南コーカサス地方に位置する)の古称だそうです…。
そもそもこのディスクを買った動機は、CDの帯に『コーカサスの風景』第2番と、副題の方が大書されていたから、興味を抱いたのであって、
『イヴェリア』という正式な曲名を目にしただけでは、多分買わなかったでしょうね…。
曲は、第1曲から順に「導入部-ケテヴァナ王女の嘆き」、「子守歌」、「レズギンカ(コーカサス地方の民族舞踊)」、「グルジア戦争行進曲」とのタイトルが付けられており、
op.10の風景や風俗の描写とは異なり、
グルジアの歴史・伝説をテーマに書かれた作品かと思われます。
第1曲は、悲劇的な内容を暗示する導入部の雰囲気が、オリエンタルムードが仄かに漂う主部にも一貫して覆いかぶさったままに、進んで行きます…。
雪や氷に覆われた、厳冬期の曇天の風土を思わせるようような、救いのない陰鬱さ…。
第2曲、ハープの奏でる繊細な美しい表情の伴奏によって、ようやく救われたような気持に…。
ここまで聴いて、一貫して第1曲を覆っていた陰鬱さの効果を実感!
チャイコフスキー『くるみ割り人形』の「アラビアの踊り」の旋律が、気だるい寛ぎを醸しますが、
これってグルジアに伝わる子守歌だったのですね!
オーボエが奏する、郷愁を湛えた民謡風の旋律で開始される第3曲序奏部は、古を語るかのような趣を有した佳曲!
主部の舞曲は、情熱的・戦闘的に盛り上がり、一気呵成にエンディングに向かって突進する、エネルギー感に溢れたもの。
民族楽器の音色が、曲に華やかな彩りを添えています。
ブラスが激しく鳴り響き、戦闘的な雰囲気で開始される第4曲ですが、
主部の旋律には、優しさや懐かしさが滲み出ています。
勇壮でエキゾチックなこの曲は、民族の大団円を表現したものなのでしょう!
コーカサス地方には、ヨーロッパ・アジア・イスラム文化が混在していると言われますが、
この曲も、op.10の組曲同様に、そういった味わいが色濃く反映されています。
もっと採り上げられても良い曲だと、思うのですが…。