交響曲第1番が完成された後、1869年に第2番を意図して作曲を開始、その年の内に完成されたものの、
最終的には作曲者自身の手で取り下げられ、生前には発表されることがなかった習作。
しかし、最晩年に作曲者自身が嘗て作曲した譜面を整理した際に、残すに値しないものは破棄したと言われますが、
この作品については、譜面に様々な自己批判を書き込みつつも破棄を免れた事実は、
この作品への愛着、或いは未練があったと考えても、まんざら的外れでもないように思えます。
若い頃から老熟したようなイメージが抱かれるブルックナーですが、
今日エントリーするショルティ/シカゴ交響楽団の演奏を聴くと、
リズムは重々しくならずに軽快に弾み、
随所に若者らしい瑞々しさに溢れたフレーズが感じられる、
後の作品にはない魅力が聴き取れる演奏です!
【第1楽章:Allegro】
冒頭の軽やかなリズム感にちょっと面喰いましたが、こういうブルックナーもありかと…。
清々しい空間に漂う、第2主題の牧歌的な旋律の美しさ!
勿論スマートさには程遠いものですが、
ブルックナー特有の重々しさを感じさせない、親しみ易い演奏です。
【第2楽章:Andante】
牧歌風の抒情を湛えた第1主題と、
メランコリーな第2主題との対比が印象的…。
素朴な穏やかさが漂い、まどろみへと誘なってくれる、今の季節にピッタリの心地良い音楽です…!
【第3楽章:Scherzo;Presto】
颯爽とした活気が漲る、若々しく意気揚々としたスケルツォと、
のどかで大らかなトリオ部…。
忍び寄る夕闇に漂う、仄かな哀愁を感じさせる序奏部…。
彼方から聞こえてくるトランペットにインスパイアされ、直ちに湧き上がり、フーガ風に進行する第1主題は、若者の勇猛心なのでしょうか。
突如水面に湧きおこるさざ波を思わせる弦の刻みは、疾風怒涛の情熱を表現するかのよう。
音色が澄み切っており、リズムが軽快に弾むショルティの指揮ぶりは、
私はこの曲にピッタリの佳演だと思うのですが…。