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W.A.モーツァルト:
弦楽五重奏曲第2番 K.406(516b)

グリューミオ・トリオ
アルバド・クレッツ(Vn)  マックス・ルシュール(Va) 


この曲は、自身の書いた管楽セレナードK.388を編曲したもの。

理由は定かではありませんが、

弦楽五重奏曲第3、4番(K.515、516)完成後に編曲されており、

これは当時の慣例にならって、3曲同時に出版しようとしたが時間がなく、

急遽編曲でお茶を濁したのではないかと推察されています…。

「曲を譜面に書く時には、既に作品は頭の中で仕上がっていた」と言われる天才モーツァルトですが、

同時期に書かれたK.515の自筆譜には、珍しく数多くの訂正個所があるとか…。

弦楽四・五重奏曲に関しては、推敲を重ねることが度々あったとも言われており、

彼にとっては苦手なジャンルだったのかもしれません…!


エントリーするのはグリューミオ・トリオ他による演奏。

モーツァルトが短調で書いた唯一無二の社交音楽ですが、

弦楽四重奏曲とは趣を異にした、ヴァイオリンの若々しくチャーミングな音色と、中声部の落ち着いた潤いのある音色が特徴的な演奏!

滑らかに流れる弦の流麗な響きは、

管楽器だけで演奏されるのどかな雅さとは一線を画した、悲しむ人に寄り添いながら気持を共有する、慈母のような癒しをもたらす演奏!

恋人(or新妻)コンスタンツェの存在を意識した音楽のようにも、感じられます…。


【第1楽章;Allegro di molto】

やり場のない怒りや悲しみに覆い尽くされたように、パトスが迸る第1主題と、

それを受けとめながら寄り添うように語りかける、明るく優しい第2主題。

対照的な感情の表出が、絶妙に組み合わされた音楽!


【第2楽章:Andante】

華やかさやきらびやかさとは皆無な、ひたすら慈しみに溢れた音楽。

ヴァイオリンとヴィオラが、悲しみを分かち合うように歌い交わす部分、絶品!


【第3楽章:Menuetto in canone】

これでもかとばかりに悲痛さを表出すりる、カノン風のメヌエット主題。

中間部は、夢の中を逍遙するような趣が…。

優しさに救われるような、味わい深い演奏です!


【第4楽章;Allegro】

共に歩む喜びに溢れた素晴らしい主題が、

力強く、いたわり合うように、さめざめと悲しみ合うように、歓喜に溢れるように等々…、

素晴らしい変奏が展開されつつ、

最後には、肯定的な喜びで終わります。


エントリー盤を聴くまでは、K.388の「管楽セレナード」をもっぱら愛聴していましたが,

最近は、専らこちらの方を聴くことの方が多くなりました…!

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