「重い病の床に就いた王の命を救うには、誰かが身代わりにならない限り、王の余命は幾ばくも残されていない」
神殿で王の病回復を祈る王妃アルチェステたちに、そんな神託が響き渡ります。
王妃自らが身代わりとなることを決意し、
お蔭で、王の病は劇的に回復しますが、
アルチェステの尊い犠牲の代償のお蔭であることを知った王は、
「彼女を失ってまで生き長らえることはできない」と、神の慈悲を請いますが容れられず、
彼女を助ける方法は、王が再び死の床に就くしかないことを告げられます。
王は、自らの死を決意しますが、
妻アルチェステは、残される子供たちの将来を慮って、王こそが生き続けるべきだと、彼女も決心を変えようとはしません…。
結局、二人の高邁な自己犠牲の精神は、神々の掟をも反故にするほどに強く、ハッピーエンドを迎えます…!
1767ん年に作曲されたこのオペラの序曲を、20世紀の大指揮者フルトヴェングラーとウィーンフィルの演奏でエントリーします。
9分弱の演奏の中には、悲劇的なパトスが迸ると同時に、自己犠牲という高邁なエートスが描かれた、
情と知のバランスが見事に融合した、フルトヴェングラーならではの演奏!
1954年8月、彼の死の3か月前に、ウィーン・ムジークフェラインザールで録音された歴史的な遺産の一つとして、是非ともご一聴されることをお薦めします!
余談ですが、この演奏を聴くと、モーツァルトが1785年に作曲した「フリーメンソンのための葬送行進曲」と驚くほど酷似しており、
「グルックのこの作品なくして、「フリーメンソン…」の誕生はなかったのでは?」と、感じてしまいます!