交響詩『中央アジアの草原にて』
活人画(扮装した人が背景の前にじっと立ち、画中の人物のように見せるもの)のための音楽として、作曲されたもの。
趣旨から推して、ロシア皇帝の業績を讃える内容のものだったのでしょう…。
広大な中央アジアの草原を、ロシアの兵に守られながら進んでいくラクダの隊商が近付き、遠ざかっていく情景を描いたものとされています。
中学の音楽の授業で、描写音楽として鑑賞したのを機会に好きになって、LPを5〜6枚しか持っていなかった時期に買ったものですから(A.フィドラー/ボストンポップス管)、
それこそ毎日のように、貪るように聴いたもので、
レコード針で溝が削れて、盤面が白くなったことを覚えています。
特に、広大な空間にイングリッシュホルンが奏でるエキゾチックなメロディーが漂よう部分では、
聴く度にノスタルジーを感じて、胸が熱くなったものでした。
今日エントリーするのは、スヴェトラーノフ指揮するロシア国立交響楽団によるもの。
演奏者も異なりますし、私の感性も変化してきていますので、印象が違うのは当たり前のことでしょうが…。
静寂に包まれた大草原の地平線の彼方から、一群の隊商の姿が現われる。
長旅で疲れているのか、ただ黙々と歩いている。
近づくにつれて、それがロシア兵に護られた異国人の隊商であることが分かる(イングリッシュホルンのエキゾチックなメロディ)。
眼前を通り過ぎていく彼らの表情は、威厳に満ちて(クライマックスで、それまで淡々としていたテンポがやや落とされ、一歩一歩を踏みしめるように演奏される)いるが、
隊商が通り過ぎ、遠ざかっていくと、再び何事もなかったかのように静寂が訪れる…。
そんな情景が音によって描かれた、一幅の絵画を観るように楽しめる演奏!
同時に、「大自然に比べると、威丈高にしていても、所詮ヒトの営みは些細なものだよ!」
そんなメッセージが伝わってくる演奏のようにも感じました。