ヴァイオリニスト・作曲家のイザイに依頼されて1892年に作曲された彼の代表作は、
ワーグナーやベートーヴェンの影響を受けつつ、恩師セザール・フランクが用いた循環形式が採用されています。
将来を大いに嘱望されていましたが、この作品が初演されてから1年後、腸チフスに侵され、24歳の若さで世を去りました。
彼の作品は、骨身を削って、魂の全てを自分の音楽に注いでいる、
そういう旨の解説が、ライナーに書かれていましたが、
とりわけこの曲の第3楽章は、
懸命に飛び立とうとする強い意志にもかかわらず、彼自身の不幸を予感させる音楽…。
早過ぎた彼の死は、単なる偶然とは考えられないような、
そんな叶わぬ憧れのように、聴き手の心に伝わってくるのです!
【第1楽章:Tres modere】
静寂の中、朝露が滴るような繊細で透明なピアノの響く中を、ヴァイオリンが奏でる若々しく瑞々しい音楽は、
さながら果てしない大海原に拡がる、若者の壮大な夢とロマンを髣髴させる、雄大で心地良いもの!
ヴァイオリンとピアノによる二重奏ですが、
波のうねりや、颯爽さと力強さがさに満ち満ちていて、
オーケストラ曲にも匹敵するような、前途洋々たる音楽が展開されていきます!
【第2楽章:Tres lent】
物想いに耽るような、そんな趣の音楽!
どこまでも密やかな心の内には、
若者の限りなく高く深い憧憬が秘められているよう…。
【第3楽章:Tres anime】
熱い志熱に駆られるように、懸命に羽ばたこうとする情熱に覆われながらも、
儚さが漂うこの楽章…!
曲の感性から2年後には、24歳で世を去ったという事実を鑑みながら聴くせいか、
胸が締め付けられる思いがします。
途中、ゆっくりと静かに語られる部分は、まるで神に召されていく祈りのように響いてきます。
燃えるような情熱と瑞々しい感性、それに飛びぬけて繊細な心を持った天才作曲家ルクー…。
是非とも一聴されることを、お薦めします!