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A.ドヴォルザーク:交響詩「野ばと」

R.クーベリック  バイエルン放送交響楽団


1892〜94年にアメリカに滞在し、代表作を次々と生み出したドヴォルザークでしたが、

帰国後は祖国ボヘミアを終の住まいと定めました。

様々な名誉を得てきたドヴォルザークでしたが、

オペラでは未だ成功を収めることができなかったために、

国民的な大作オペラの完成に意欲を燃やし、

祖国の民話や詩を題材にした標題音楽に力を注ぎ始めます。


ドヴォルザークは1896年に、

チェコの国民的詩人エルベン(1811-70)が、民間伝説や民話に基づいて書いた詩集「詩の花束」に収載された13篇のバラードから、

4篇(真昼の魔女・金の糸車・水の精・野ばと)を選んで、4つの同名の交響詩を作曲したのは、

国民的オペラの大作を書くための下準備だった、とも考えられているようです。


今日エントリーする「野ばと」の粗筋は、

若い男と深い関係になった人妻が、夫を毒殺し、

葬儀では悲しみを装いますが、その後、男と再婚。

しかし、亡夫の墓の上に生えた樫の木が生長し、鳩が巣を作ると、

その鳴き声を聴くたびに罪の意識に苛まれた彼女は、

ついには自らの命を絶ってしまう、

そんな内容のバラードです!


深い悲しみを湛えた葬送行進曲によって、曲は開始されます。

澄み切ったトランペットの響きが、一層の悲しみを表現する一方で、

ひきつった、或いはひっかくように奏される弦楽器は、

悲しみを装う一方で、「してやったり!」とほくそ笑む、妻の哄笑を表現しているのでしょう。


トランペットが華やかに奏され、未亡人となった女と、若い男との結婚の祝宴を描いているのでしょうか。

とろけるような甘美な旋律と、葬送の曲とが交互に登場するのは、

払拭し切れない運命を予兆しているのでしょう…。

ボヘミアの力強い、或いは郷愁を漂わせた民族舞曲が奏されて、祝宴が佳境に達する中にも、

時折聞こえてくる、悲しげな野ばとの鳴き声…。


やがて訪れる、穏やかな黄昏時にも、次第に不気味さが漂い始めます…。

悲しげな野ばとの鳴き声が聞こえる中、罪の意識に苛まれる女の激情…、

エンディングの穏やかさは、自らの胃に血を絶つことによって、救われたと言うことなのでしょうか?


クーベリック指揮するバイエルン放送響の演奏は、ドヴォルザーク特有の旋律の美しさと、詩が内包するのであろう劇的な表現に長けた名演奏!

あまり聴かれることのない交響詩ですが、

聴き応えのある作品として、最近よく聴くようになりました。

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