そのためか、第5番と比較すると、全曲を通して曲想は明るいのですが、
それ以前にジダーノフ批判によって、作曲の筆を折られたこともあってか、
それぞれの楽章には、そのために無為に費やされた日々に対する、痛烈な皮肉が込められた作品のように感じられるのです。
【第1楽章:Allegretto】
扉をノックするように、愉しげに開始される冒頭部。
明るくって耳触りは良さは、やがて狂気の沙汰へと高揚していきます…。
どこか甘言を弄されているようで、今一つ信用できない…、
そんな皮肉っぽい諧謔味を感じさせる音楽です。
【第2楽章:Allegro con moto】
華やかですが、ミステリアスでもあり、猜疑心が見え隠れするこの楽章。
感情を伴わずに機械的に御刻まれる3拍子のリズムは、
見せかけのきらびやかさを揶揄するような、皮肉っぽさが感じられる舞曲です。
【第3楽章:Lento】
チェロの奏でる、寂寥感に満ちた哀れでもの悲しい旋律は、費
消された日々を思い浮かべる、哀悼の歌でもあるのでしょうか。
この天国的に美しい楽章には、
亡きスターリン(体制)に対する、痛烈な批判が込められてりるように感じるのですが…。
【第4楽章:Lento-Allegretto】
第3楽章の余韻を漂わせつつ開始される、愉しげで艶やかな気の聴いた音楽。
ピチカートにのって諧謔味を感じさせる音楽が展開されますが、
やがて穏やかに、しかしどこか虚しさが訪れて…。
ショスタコーヴィチの弦楽四重奏の中では、それほど注目される作品ではないようですが、
ボロディン四重奏団の演奏によって、この曲に内包されたメッセージを聴き取ることができたように感じます!