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ベートーヴェン:
ヴァイオリンソナタ第3番 ニ長調

アルチュール・グリューミオー(Vn)  クララ・ハスキル(P)


ベートーヴェンが27歳の1797年に3曲のヴァイオリンソナタ(op.12)が作曲されましたが、

この頃には既に聴覚障害の兆候が現われていたと言われています。

にもかかわらず、前途洋々たる希望に溢れ、若々しい感性が漲るこれらの作品は、

ウィーン古典派の様式を受け継ぎつつ、既にベートーヴェンの個性や独創性が明確に打ち出されていると評価されています。

中でも今日エントリーするグリューミオとハスキルが共演した第3番は、ヴァイオリンとピアノの仲睦ましい語らいが素晴らしく、

若き日のベートーヴェンが抱いたのであろう、ささやかな憧れが聴き取れるようで、

彼の初期作品の中では、最も愛好する曲であり、演奏でもあります。


【第1楽章:Allegro con spirto】

球を転がすようなチャーミングなピアノの響きと、

愉しげに、寄り添うように応ずるヴァイオリンの甘く美しい音色が、和気あいあいとした雰囲気を醸す冒頭部…。

幸福感と、迸るエネルギー感に満たされながら、

千変万化していく多彩な表情に惹き込まれていく、瑞々しい美しさに溢れた楽章です!


【第2楽章:Adagio con molt’espressione】

ピアノとヴァイオリンが、繊細に奏でていくメロディーの美しさ!

それぞれの楽器が交互に、感動に打ち震える胸の内を表現したようなこの楽章は、祈りのような崇高さを湛えたもの。

まぎれもなく、若き日のベートーヴェンのみが描き得た、素晴らしい楽章だと思います!


【第3楽章:Rondo, Allegro molto】

二つの楽器が語りあうようにして進行していく、華やかで愉しげなロンド楽章は、

今の喜びを目一杯享受している、そんな若者のささやかな悦びに胸打たれる演奏が展開されています!


グリューミオーとハスキルの演奏でこの曲を聴いていると、

青春時代に叶わなかったほろ苦い想い出に胸をときめかせつつ、幸せな気分に包まれていくのです。

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