最近聴いたCD

E.トゥビン:バレー組曲「クラット」

N.ヤルヴィ  バンベルグ交響楽団


エストニア二伝わる民間伝承を題材にして書かれたバレー音楽。

後にトゥビン夫人となったダンサーのザーリックの台本に、彼が収集していたエストニア民謡から、30曲を選んで曲をつけたもの。

1938〜41年にかけて作曲されました。


バレーの粗筋は、

貧しい農民が、がらくたを集めて作った不思議な形をした悪魔(クラット)のお蔭で、次第に巨万の富を築き上げましたが、

実は、悪魔を蘇らせるためには、その度ごとに3滴の血(=魂)を渡さなければなりませんでした。

物語は、悪魔の魂を持つクラットが、農場に火をつけ、農夫を絞殺するという残虐な展開を示しますが、

最後には農夫の娘と、そこで働く若者がめでたく結ばれて、自分達の力で農場の再生を誓う、という内容。


今日エントリーするのは、1961年にトゥビン自身によって組曲化されたもので、3つの場面、11曲から構成されるもの。

父ヤルヴィ指揮するバンベルグ交響楽団の演奏です。

素朴で大らかで力強いこの曲を聴きながら、大相撲の大関把璃都のキャラクターをふと思い浮かべ、

そう言えば、彼はエストニア出身だったのと気付き、思わず苦笑してしました…。


【第1部:序奏・農夫の踊り・悪魔の踊り】

何かが起こりそうな期待感に溢れるていますが、前述したまがまがしい内容とは異なり、大らかな印象を受ける「序奏部」。

素朴で力強い「農夫の踊り」。

悪魔の哄笑を思わせるピアノの響きで始まり、エネルギッシュに激しく高まっていく「悪魔の踊り」。


【第2部:長い踊り・農夫のワルツ・牡鹿の踊り】

金管・木管の奏する素朴で茫洋としたメロディーが、力強く陽気に盛り上がっていく「長い踊り」。

フィドールの音色を真似たような、ソロヴァイオリンの音色が、素朴で鄙びた味わいを有する「農夫のワルツ」。

切迫した雰囲気で開始され、華麗で力強い音楽が繰り広げられる「牡鹿の踊り」。


【第3部:間奏曲・祈祷師達の踊り・山羊・雄鶏・オーロラの踊り】

木管楽器やホルン、それにヴァイオリンソロが、しみじみと農村の穏やかな風景を奏でる「間奏曲」。

ティンパニが強打され、重々しく「祈祷師達の踊り」が始まりますが、尊大ぶっていてユーモアが感じられる音楽。

うろたえるような「山羊」や、激しく逃げ回るような「雄鶏」は、祈祷師たちが生贄にしようとする動物の動きを表現したものなのでしょうか?

「オーロラの踊り」では、金管が壮麗に鳴り響き、驀進するSLを思わせる力強い躍動感や、シンバルンや銅鑼による一撃!

「春の祭典」を思わせるような、シャーマニズムの世界なのでしょうか…。


大らかさで力強さく、素朴な民族色に溢れたこのバレー曲!

20世紀音楽としては聴き易いと思いますし、

オーケストラ曲のお好きな方には、是非ともお薦めしたい作品!

近いうちに、全曲盤で曲の神髄を味わい直したいっと思っています。

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