初期のそれは、左手の定型の伴奏の上を、右手が甘美で感傷的な奏でるという点で、
アイルランドの作曲家ジョン・フィールドの影響を強く受けていると言われます。
しかし、1830〜33年(20〜23歳)にかけて作曲されたop.15の3曲では(op.9-3もそうですが)、
フィールドの影響から脱却して、深い激情を表現するような音楽へと変化し始めました。
ロシア帝国の支配から脱却を狙ったワルシャワ蜂起の勃発や、その失敗が、
祖国を離れたショパンの作風に、大きな影響を及ぼしたと考えて差し支えないでしょう。
エントリーする演奏は、マリア・ジョァン・ピレシュによるもの。
彼女の演奏からは、祖国ポーランドや、そこに住む家族・友人達の安否を懸念する心の動揺や、空虚感が聴き取れると同時に、
ショパンのノクターンの持つ、甘美で感傷的なリリシズムが鮮烈に表現された名演と感じるのです。
【ノクターン第4番(op.15-1):Andante cantabile】
穏やかな心情を語るように、淡々と奏される主部は、清々しく爽やかな趣…。
中間部は、一転して心に動揺が走り、音楽は激情的な高まりが…!
再び訪れる主部は、今度は思いの丈を尽くして演奏され、
余韻を漂わせつつ、、静寂の中に美しく消えていきます。
【ノクターン第5番(op.15-2):Larghetto】
早朝の川面に立ち昇る霧のように、儚く漂うように開始され、次第に思いが高まっていく、気高くも美しい主部!
中間部は、心がちぢに乱れる如く、動揺が生じて感情が高ぶりますが、
最後は、風がそよぐような柔らかで、しかしきらめくようなアルペジョによって、静かに曲は閉じられます!
ショパンのノクターンの神髄を聞くような、素晴らしい演奏!
【ノクターン第6番(op.15-3】:Lento】
寂しげな心の内を独白するような孤独感を漂わせながら、幻想的に展開されつつ、やがて気持が鎮まっていき…、
突然、心の霧が晴れたかのように、明るさが見え始めたかのように第2部に移行しますが、
結局は解決に至らないままに、曲は終わります。
ショパンのノクターンの中では、地味な存在ですが、
演奏によっては深い味わいが滲み出る名作だと思います!