最近聴いたCD

F.シューベルト:歌曲集T(全22曲)

イワン・ボストリッジ(テノール)  ジュリアス・ドレーク(ピアノ)


気温が上昇して、周囲の雪が溶け始めたせいか、目が覚めた時から周囲一帯が霧に覆われた、晴れ間のない一日でした。

.昨日はマーラーの交響曲第6番という大曲を聴いた上に、今日のこの天候ですので、

気分転換の意味も込めて、シューベルトの歌曲集を、

それも、なるだけ穏やかな気持ちで聴ける曲をと、

ボストリッジ(1964-)の歌曲集Tの方を選びました…。


声楽にはまだまだなじみが薄いのですが、

この人の爽やかな声と、理知的で繊細な表現力にすっかりほれ込んでいる私…!

1996年、ボストリッジ31歳の頃の録音です。


先ずは、どなたもがご存知の「鱒」と「野ばら」。

正直、小・中学校の授業で歌って以来、「こんな曲の、どこがそんなに良いの?」と思い続けていたのですが、

瑞々しい静謐さを湛えた伴奏と、ボストリッジの爽やかな歌唱を聴いて、これまでの印象は払拭!

初めて曲の魅力に触れる思いがしました!


「ガニュメデス(ゼウスに気に入られた美少年の名)」での、のどかで爽やかな歌唱が、

やがて祈りのような静謐さに満たされていく、展開の妙!


素晴らしい時の訪れを予感させるピアノの前奏と、

憧れを語るような静謐な表現が、感動をもたらしてくれる「夜と夢」!


密やかな感謝の気持ちが穏やかに歌い上げられた、

有名な「音楽に寄せて」!


落日を目にしながら、移ろいゆく時の儚さを感じつつ、一日一日を懸命に生きようていく「水の上に歌う」。

病に侵されたシューベルトの心が切々と伝わってくる、

詩と曲が見事に融和した傑作です。

ボストリッジの静かな歌い口から、儚い憧れがひしひしと伝わってくる、名唱中の名唱ではないでしょうか!


春を迎える悦びに溢れた「ミューズの子」。

無邪気に駆け回る子供たちの姿を彷彿させるピアノ伴奏が印象的な演奏です!


尚、このディスクの最後(22曲目)には、「魔王」が収録されていますが、

折角穏やかな心地良さを感じながら聴き入っていましたので、

これは、今回割愛することにしました…。

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