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アウリス・サリネン:
ペルトニエン・ヒントリクの葬送行進曲の諸相

ヴォイチェク・ライスキー  ムジカ・ヴィテ室内管弦楽団


作曲者のアウリス・サリネン(1935〜)は、前衛的なスタイルを出発点としながらも、

1960年代半ばからは、シベリウスの技法を継承しつつ、母国の歴史や伝説を題材にした作品に取り組んでいる、現役作曲家。


ペルトニエン・ヒントリクとは、1880年頃を中心にフィンランドで活躍していたフィドル(民族音楽で使われるヴァイオリンを指す)奏者の名前で、

彼が創ったとされる葬送行進曲は、当時大変流行していたとか。

ひとときフィンランド国内でもすっかり忘れられていたこの曲を素材として、

1969年に、主題と5つの変奏から構成された単一楽章の弦楽四重奏曲第3番として書かれたものです。


今日エントリーするのは、後に作曲者自身が弦楽合奏版に編曲したもので、ヴォイチェク・ライスキー指揮のムジカ・ヴィテ室内管による演奏!

不思議な音楽です!

素朴な悲しみを歌った旋律が見え隠れする中、

引き裂くような不協和音は、やり場のない慟哭を表現しているように思えますし、

瞑想的で儚く美しい洗練された後期ロマン派音楽的な旋律も登場し、

全体として、どこか非現実的な、それでいて強く心に沁み入ってくる、大変に印象的な音楽が展開されます…。


いきなりヴァイオリンのソロが奏でる、行き処がなく虚空をさまようように、久遠の彼方から鄙びた音色で響いてくる寂しげな民謡風の旋律に心奪われますが…。

この鄙びた民謡風の旋律と、不協和音が同時に鳴り響くポリフォニーに耳を傾けていると、

ロシアの圧政下に置かれていた当時のフィンランドの人々の悲しみと諦めが、今もなお脈々と受け継がれているような、

そんな瞑想的な世界が感じられる作品なのです!


一聴すると、非現実的な世界に惹き込まれる作品ですが、

何度か聴いているうちに、葬り去ることのできない歴史を語るような、強いメッセージ性をもった作品と感じるようになりました。

ぜひ、ご一聴ください…!

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