最近聴いたCD

F.メンデルスゾーン:厳格な変奏曲

アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)


主題と17の変奏、そしてコーダから構成されるこの作品は、

第14変奏でニ長調に転じる以外は、全てがニ短調で統一されているために、

単調に陥り勝ちになるのでしょうか。

演奏時間は10分強の作品ですが、

私が所有する高名なピアニストのディスクの中で(と言っても4種類ですが)、

興味深く全曲を聴き通せたのはブレンデル盤だけ!

揺れ動く感情が、試行錯誤を繰り返しながら、

やがて宗教的な高みにまで到達して(第14変奏)、

そこから新たな感動が誕生する、

そんな含蓄深い演奏と感じました!


深い孤独管に覆われた、寂寥とした心境が吐露されるような主題提示に始まり、

試行錯誤を繰り返しながら、荘重なフーガ風の第10変奏に至って、ようやく解決の兆しが仄見え初め、

第11変奏では穏やかな瞑想の世界をさまよいつつ、

第14変奏では、ようやく止揚された境地に至ったかのような、澄み切った音楽がしみじみと語られるよう…。


「音の風景画家」と言われた彼の作品としては珍しく、歌謡性とは無縁な、

ひたすら内面性を追求した、厳しく過酷な音楽!

演奏家にとっては、はったりの効かない難曲中の難曲だと思います!

その意味でもブレンデル盤は、

メンデルスゾーンの意図を完璧に読み切った、大変に説得力の強い、名盤中の名盤ではないでしょうか!

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