第14変奏でニ長調に転じる以外は、全てがニ短調で統一されているために、
単調に陥り勝ちになるのでしょうか。
演奏時間は10分強の作品ですが、
私が所有する高名なピアニストのディスクの中で(と言っても4種類ですが)、
興味深く全曲を聴き通せたのはブレンデル盤だけ!
揺れ動く感情が、試行錯誤を繰り返しながら、
やがて宗教的な高みにまで到達して(第14変奏)、
そこから新たな感動が誕生する、
そんな含蓄深い演奏と感じました!
深い孤独管に覆われた、寂寥とした心境が吐露されるような主題提示に始まり、
試行錯誤を繰り返しながら、荘重なフーガ風の第10変奏に至って、ようやく解決の兆しが仄見え初め、
第11変奏では穏やかな瞑想の世界をさまよいつつ、
第14変奏では、ようやく止揚された境地に至ったかのような、澄み切った音楽がしみじみと語られるよう…。
「音の風景画家」と言われた彼の作品としては珍しく、歌謡性とは無縁な、
ひたすら内面性を追求した、厳しく過酷な音楽!
演奏家にとっては、はったりの効かない難曲中の難曲だと思います!
その意味でもブレンデル盤は、
メンデルスゾーンの意図を完璧に読み切った、大変に説得力の強い、名盤中の名盤ではないでしょうか!