本来の題名は、「創作主題による変奏曲」ですが、
作曲者自身が編曲したピアノ版の解説に「全ての変奏の基盤となっている、別のもう一つの主題の存在」を示唆したり、
各変奏ごとに付けられたイニシャルや略称の人物が、秘密にされていたことから、
ギリシャ語の「エニグマ(謎)」という名が付けられたとか!
作曲家の意図か、或いは出版社の思惑が絡んでいたのかは分かりませんが、
いずれにせよ話題性を狙ったものであろうことは、ほぼ間違いのないところ…。
しかし今日では、ブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」や、
ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」と並んで、
管弦楽のための変奏曲中、秀逸の出来栄えを示す作品と評価されています。
エントリーするのシノポリ指揮するフィルハーモニア管のディスク。
主題と14の変奏が、
時にきっぱりと、
時に印象的な余韻を漂わせつつ、
豊かな表情をもって明快に描き分けられた、説得直の強い演奏です。
【主題】
切々と訴えるような、印象的な自作主題で開始されます。
【第1変奏】
提示された主題が、一層深い思い入れを込めて登場。
【第2変奏】
ざわざわとして、落ち着きのない雰囲気が漂います…。
【第3変奏】
ファゴットの音色が、ワクワク感やユーモアを感じさせます。
【第4変奏】
勇壮ながら、時に嬌声のようにも聞こえるのですが…
【第5変奏】
深い思い入れと、愉しげな寛ぎが交互に登場。人物の二面性を表現しているのでしょうか…
【第6変奏】
洒落っ気とユーモアが感じられる、軽快な音楽…
【第7変奏】
激情的なこの曲は、未知のの海原に乗り出す冒険心に溢れた勇壮なもの…。
【第8変奏】
一転してパストラールな雰囲気が漂う音楽。穏やかさをを漂わせつつ…
【第9変奏】
前曲の穏やかさたなびく中、宗教的で崇高なこの変奏は、素晴らしい高みを感じさせてくれます!この曲の白眉の一つでしょう。
【第10変奏】
一転して、楽しげでコミカルな雰囲気が…。「時の踊り」を彷彿しました。
【第11変奏】
突風が吹き荒れるような…、ファゴットの動きが特徴的な変奏です。
【第12変奏】
蠱惑的な独奏チェロの響き!秘められた影を持つ女性の、言いしれぬ魅力を湛えた美しさが…?
【第13変奏】
夜、森の木々がざわめく中から聞こえてくるクラリネットのしみじみとした音色は、ナイチンゲールンの鳴き声でしょうか。月下に佇む絶世の美女を髣髴する、ロマンティックな音楽です!
【第14変奏】
当時の最強国イギリスを讃えるような、力強く活気に溢れた最終変奏。気高く誇り高い音楽は、「威風堂々」と相通ずるようにも感じられます。
解説書で触れられている「謎」の分析云々を一切無視して、ひたすら変奏を楽しむようになってから、大好きな曲にになりました。
中でもシノポリの演奏は、曲の流れが極めて自然であることに加え、
各変奏毎の趣の深さが秀逸!
お薦めできる演奏だと思います。