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J.ブラームス:ピアノ三重奏曲第1番 ロ長調  

I.パールマン(Vn)  L.ハレル(Vc)  V.アシュケナージ(P)


1853年、20歳のブラームスは、ヂュッセルドルフにシューマンを訪ねたことがきっかけとなって、

彼によって天才作曲家として、広く世に知られるようになりましたが、

その折に次々と意欲的な作品が構想されたと言われています。

このピアノ三重奏曲第1番も、その時に着想され、翌年の1月にハノーヴァーで完成されました。

とは言っても、今日我々が聴くこの作品は、それから35年後に、作曲者の手によって大改訂されたもの。

時に枯淡の境地が垣間見れるのは、そのためなのでしょうか。


【第1楽章:Allegro con brio】

チェロの奏でる素朴な旋律で開始されますが、次第に熱っぽさを帯びていきます。

そっと寄り添うように語りかける第2主題。

いかにもブラームスらしい哀愁を帯びた切なさと、制御できない感情高まりが表現された楽章!


【第2楽章:Scherzo(Allegro molto)】

風に吹かれて舞い上がる枯葉を思わせるような、初冬の趣きを有するこのスケルツォは、

ブラームスの心のときめきを象徴するかのよう…。

打ちとけたフレンドリーな気分のトリオ部は、心からの寛ぎが感じられます。


【第3楽章:Adagio】

厳かな晩鐘のように静かに響き渡るピアノの音色と、

それに呼応するかのように語りあうヴァイオリンとチェロの密やかさ!

敬虔さと幸福感に満たされた、若き日のブラームスの内面の充実がうかがい知れる、素晴らしい音楽です!


【第4楽章:Allegro】

ピアノの伴奏に乗って、先ずチェロが、続いてヴァイオリンが奏でるロ短調の主題は、

強い憧れが迸る幸福感に満ちたもの。

ヴァイオリンの奏でる主題を支えるチェロのピチカートは、胸のときめきを彷彿させるほどに印象的!

終楽章は、主調(ロ長調)とは異なるロ短調で書かれた変則的なものですが、

その効果と言えば良いのでしょうか、

強い憧れを内包した幸福感、や幽玄さが聴き取れる、若きブラームスの充実した心境が、如何なく表出されていると感じます。


パールマン・ハーレル・アシュケナージによるブラームスのピアノ三重奏曲は、必ずしも高くは評価されていませんが、

少なくとも第1番の演奏に関しては、若き日のブラームスの内的充実を示す漲る生気や、強い憧れが表出された、素晴らしい演奏だと思います…。

とりわけ,L.ハレルのチェロの静謐な演奏は、曲に深い趣を与えていると感じました!

若き日のブラームスの名曲の名演として、一聴されることをお薦めします!

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