歌劇「スペードの女王」作曲のために滞在していたフィレンツェで、サンクトペテルブルグ室内楽協会の名誉会員に選出されたとの報せを受け、
その返礼として作曲され、同協会に献呈されたもの。
献呈時、スコアに「この名誉は、フィレンツエでの良き思い出になりました…」と書かれていたことから、そのまま副題として使われたとか。
フィレンツェというイタリアの街の想い出をテーマに作曲されたもの(私は、曲を聴くまではそう信じていました)ではありませんので、念のため!
実を申しますと、私は原曲の弦楽六重奏版を聴いたことがなく、弦楽合奏版で知った曲。
今日エントリーするのも、ブダペスト室内合奏団の演奏です…。
【第1楽章:Allegro con spirito】
ただならぬ熱気に包まれ、どこまでも気分が高揚していく第1楽章は、
ロシア民集の熱い息吹が感じられるワルツで開始されます。
ウィンナワルツとは異なり、気どらず、何の衒いもなく感情がそのままぶつけられたような無力的な熱気あふれるこのワルツは、ロシア音楽特有のもの!
第2主題は、高雅さを湛えた美しい旋律ですが、
溢れんばかりのパッションに包まれて、曲がどんどん盛り上がっていくために、
せっかくの曲の美しさが活かされていないと言うか、
「もう少しゆとりのある演奏であれば…」、などと、思ったりもするのですが…。
弦楽合奏版では、どの演奏もそのように感じてしまうのですが、原曲ではどうなのでしょうか?
【第2楽章:Adagio cantabile】
短い寂しげな序奏に続いて、
ピチカートに乗って、思いの丈を打ち明けるような美しい旋律は、いかにもチャイコフキーらしい、仄かな哀愁が漂います。
初冬の訪れを感じさせるように、一陣の風が枯葉を舞い上げるような趣を有する中間部が終わると、
再びピチカートに乗って、独奏チェロがしみじみと想いを語り、
寄り添うようにそれに応える独奏ヴァイオリン…。
大変に印象的な、美しいひとときです!
【第3楽章:Allegretto moderate】
主題はロシア民謡から引用されているのでしょうか。
しみじみとした懐かしさが感じられる、素朴な音楽です。
【第4楽章:Allegro vivace】
ロシア(或いはボヘミア)の農民舞曲を思わせる情熱的な第1主題と、
郷愁を湛えた第2主題!
これらがフーガ風に展開されていき、
それに伴って、趣はどこまでも高まっていく素晴らしい終楽章!
原曲の弦楽六重奏版も、是非とも聴いてみたくなりましたが、
皆さまのお薦め盤がありましたら、是非ご教示ください!