一般的に6/8や9/8拍子といった複合拍子をとり、
低音部では概ね単純なリズムが繰り返されることによって、
波間を揺蕩うような印象を与える楽曲とされています。
メンデルスゾーンの「ヴェニスのゴンドラの歌」、ショパンやチャイコフスキー、ラフマニノフの「舟歌」などが知られていますが、
中でもフォーレ(1845-1924)は、1880年の第1番に始まり、1923年の第13番に至るまで、
壮年期から最晩年に渡って、13曲もの「舟歌」を作曲しています。
フォーレにとっては、やはり最晩年までに渡って13曲書かれた夜想曲共々、
その時々の自らの心境を託すのに相応しい楽曲だったということでしょうか。
彼の音楽の変遷は、大きく初期・中期・後期に分けられますが、
今日エントリーする舟歌は、そのうちの初期作品に分類される第1〜4番まで…。
次作の第5番になると、俄然内省的な表現が際立つように感じますので、
「舟歌」でのこの分類は、妥当かと思います。
【第1番:A minor】
恋しさで胸が締め付けられるような情熱と、
すぐにも消え去るような儚さが感じられる音楽。
中間部は夢のように美しく煌びやかさが…。
大変にロマンティックな、美しい作品です。
【第2番:G major】
主部は、無邪気でサロン的な華やかさを有する音楽ですが、
中間部での静かな物寂しさは、夢から覚めた儚さのように感じられます。
【第3番:G flat major】
アルペジオで奏される大変に印象的な旋律と、
焦がれるような深い情熱を湛えつつも、手にすると同時に消え去っていくような、
そんな実体感の希薄さ、頼りなさが表現されているような音楽!
【第4番:A flat major】
第3曲と同じく、柔らかなアルペジオが印象的な曲。
時に水面に浮かぶ泡沫のような儚さを、
時に虚飾に彩られたイルミネーションを感じさせる、素晴しい音楽だと思います。
フォーレの初期作品は、サロン的だと言われることがあるようですが、
今日エントリーした作品でも、確かに第1、2番はその傾向があるのかも知れませんが、
第3番以降は、実に内容の深い音楽!
イギリスの女流ピアニスト、キャスリン・ストットの演奏は、実に味わい深い解釈を聴かせてくれると思います!