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W.A.モーツァルト:
ピアノ四重奏曲第1番 ト短調 K478

アンンドレ・プレヴィン(ピアノ)  ムジークフェライン四重奏団


モーツァルトが弦楽三重奏とピアノのための作品を書いたのは、2曲だけ。

1785年に完成されたこの曲は、交響曲第25・40番や弦楽五重奏曲第3番で知られる、ト短調という悲劇的な調性で開始されますが、

終楽章はト長調で書かれており、

翳りを含みながらも、

透明な美しさを漂わせた、静謐ですが晴れやかなロンド楽章という形を取っています。

注文主の楽譜出版社のホフマイスターから、「素人向けの作品を!」との依頼を考慮したからでしょうか。

そのお蔭で、主調のト短調に戻らずに、ト長調で書かれた終楽章は、すばらしく深みのある音楽に!


【第1楽章:Allegro 】

弦のユニゾンデ開始されるただならぬパッションを湛えた冒頭部と、

慰撫するようにそれに応じるピアノ。

時に虚無感すら漂わせながら、刻々と変化していく表情には、濃い陰影が漂います…。

曲の進行に伴って悲しみは深まり、時に慟哭するような激しい感情表現すら聴き取れる、そんな楽章です。


【第2楽章:Andante】

冒頭、ピアノで歌われる優しさと憧れを思わせる美しい旋律が、弦のユニゾンで不安定さを漂わせながら繰り返されます…。

ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ各一本づつが醸すユニゾンの響きの頼りなさを、効果的に利用しているように思えるこの音楽!

思いがけなくも儚さが漂うような、素晴らしい世界が展開されます…。


【第3楽章:Rondo(Allegro)】

前述した美し九明瞭なピアノの響きで開始されますが、

静謐な透明感を漂わせつつ進行していくこの楽章。

時折よぎる悲しみは、やがて慈しみへと昇華されていく、

そんな表現の妙に魅了されていく、素晴らしい音楽だと思います。


演奏は、プレヴィンのピアノとR.キュッヘル率いるムジークフェライン四重奏団の演奏。

とりわけ、第2、3楽章の味わい深い表現は、特筆もの。

是非ともご一聴頂きたい曲であり、演奏だと思います!

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