最近聴いたCD

R.シューマン:フモレスケ(ユーモレスク) op.20  

ウラジーミル・ホロヴィッツ(ピアノ)


「フモレスケ(=ユーモレスク)」とは、滑稽味を帯びた軽やかな器楽曲の小品。

1838〜9年に書かれ、多くの小品によって構成されるこの曲は、全曲が切れ目なく演奏されます

私の所有する5枚のCDでも、トラック数が6、7、11とまちまち…。

演奏者によって、曲の構成に関する考察が多様化する、その分難曲と言えるのかもしれません…。

しかしながら、シューマンの心から湧き上がる様々な感情が、随想録のように無作為に並べられているように思えるこの作品が、

全曲を通して、随所で様々な感慨を覚えつつ、大きな流れとして聴き通せるのは、

ピアニストの解釈もさることながら、

やはりシューマンの緻密な構成力によるものだと思うのですが…。


今日エントリーするのは、ホロヴィッツが1979年に演奏したもの。

「ヒビの入った骨董品」とまで酷評された初来日公演の、4年前に収録されたものです。

私が聴いた中では、曲の随所に瑞々しインスピレーションが感じられ、

且つ、(あの来日公演とは異なり)一瞬たりとも弛緩することのない、気力の漲った素晴らしい演奏と思えるからです!


【1:Einfach-】
「単純に(or純粋に)」と指示されたこの曲は、やすらぎのヴェールに包まれた、無邪気な子供が見る夢の世界でしょうか。

【2:Sehr rasch und leichtet】
遊びたくって仕方ない子供の、抑えきれないはやる気持を表現したような、ワクワクするような楽しさに溢れています。

【3:Noch rascher】
意気揚々として、得意満面な表情が思い浮かぶ、いかにも楽しげな曲。

【4:Hastig】
心の赴くままに、力強く突進するような曲…。

【5:Nach und nach immer lebhafter und starker】
強い憧れをもって、脇目もふらずに邁進する、一層力強さを感じる音楽…。

【6:Einfach und zart】
叶わぬこととは思いつつ、諦めきれない願いがひしひしと伝わってくる、儚さを漂わせた大変に印象的な美しい旋律…。

【7:Intermezzo】
焦りのような、切迫した気持が表現された曲…。

【8:Innig】
心安らかに人を思う素直さが…。途中自虐的になりつつも、最後には平穏さが訪れます。

【9:Sehr lebhaft】
活発ながら、千千に乱れる心が…

【10:Mit einigem Pomp】
やがて、何かを希求するかのように、力強い歩みへと変化していきます。

【11:Zum Beschluss】
抒情的で美しいこの曲は、人を恋する幸せに溢れた音楽。最後は大団円へと向かうように、大きく盛り上がります!


ルプーやアシュケナージの、曲の隅々にまで繊細さが行き届いた、美しい表現も素晴らしいと思うのですが、

この曲に関しては、前述しましたように、随所にインスピレーション溢れる美しさや、時にデモーニシュな雰囲気すら漂う、ホロヴィッツの演奏(1979年録音)を、お薦めしたいと思います。

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