内容は、ある国の女王が、森に咲く美しい赤い花を探し当てた騎士を、自分の結婚相手として選び、王位の座に就かせると公言しますが…。
エントリーするのは、シノポリ指揮するフィルハーモニア管の演奏。1990年、東京公演時でのライヴ録音です。
【第1部:森のおとぎ話】
<物語>
姫に仕える騎士の兄弟が、森に咲く赤い花を探しに出かけ、ひとの良い弟が柳の木の下で発見。
そのことを知った兄が、弟を殺して赤い花を奪うために弟を殺し、勇躍城へと戻ります。
時にワーグナー『ジークフリート』の「森の囁き」を思わせる、メルヘンチックな雰囲気が漂う第一部。
弟を刺し殺す緊迫した場面を除けば、
あとは穏やかで心地良い時間が過ぎていきます…。
マーラーの繊細で卓越した管弦楽書法の萌芽が感じられる、美しい音楽です。
【第2部:吟遊詩人】
<物語>
柳の木の下で白骨化した死体を発見した吟遊詩人が、それで横笛を作って吹くと、笛は自分が兄に殺された顛末を語りかけます。
そのことを王女に伝えるために、城へと向かう、吟遊詩人…。
行進曲風のリズムが、森を行く吟遊詩人の姿を表現しているのでしょうか。
次第に緊迫した様相を帯び始めます。
穏やかな森に漂う、まがまがしい不気味な雰囲気が印象的…。
【第3部:婚礼の音楽】
<物語>
王女と騎士(兄)との結婚式の席に、吟遊詩人の吹く横笛の悲しい歌が流れます。
激怒した新郎がその笛を奪って吹くと、「兄さん、僕を殺したのはあなたですね。今吹いているのは、僕の足の骨ですよ…」
呪いのような歌声が…。そして崩れ落ちる城郭!
華やかなファンファーレに包まれた結婚式の場へ、吟遊詩人が入場。
一転して音楽は悲劇性を帯び始め、鳴り響く金管は、王の狂乱を表わすのでしょうか。
後の交響曲第1番の終楽章を思わせるような、風雲急を告げる音楽が鳴り響き、城郭は崩壊、そして訪れる静寂…。
第2部から第3部にかけては、まるでオペラを観るような劇的な展開が…。
メルヘンの世界と、血気盛んな若き日のマーラーが同居した、いかにも彼らしい作品だと思います。