最近聴いたCD

C.シマノフスキー:交響曲第3番『夜の歌』  

サイモン・ラトル指揮  バーミンガム市交響楽団


この曲が書かれた1916年頃のシマノフスキーは、古代・中世・ルネサンス期といった古の文化への共感を深めつつ、

ギリシャ、アラビア、ペルシャ等の異国文化への憧れを抱き始め、

次第に後期ロマン派の影響から脱却して、神秘的で異国的な作風へと変化していきます。

そんな中で書かれたこの作品は、

13世紀ペルシャの詩人であり、イスラム教神秘主義哲学の担い手の一人でもあったジャラール・ウッディーン・ルーミー(1207-73)の詩集から、

タイトル通りの詩を採り上げた、独唱・混声合唱付きの交響曲。

全3楽章から構成され、切れ目なく演奏されます。

神秘主義的なこの詩を理解することは、私にはとうてい出来ませんが、

予言によって知った、今宵訪れるであろう神の啓示(or奇跡)との一期一会の出会いを待ち望む内容かと、漠然と考えています…。


今日エントリーするのは、サイモン・ラトルの演奏は、

この曲でしばしば指摘される、官能的な印象を受けることはありませんでした。

静謐さの中に渦巻くエネルギー感や、シャーマニズムを髣髴させる神秘的な雰囲気が表出された演奏、

私にはそう感じられました。


【第1楽章:Moderate assai】

冒頭部のスケール豊かなオルガンの重低音は、宇宙の鳴動でしょうか…。

万物の生成を思わせるこの楽章には、精神的な充足感が漲ります。


【第2楽章:Vivace、scherzando】

行進曲風の主題や、原始の森にこだまする鳥たちの声から、

混沌とした中から生まれ出ずる、生命の神秘を髣髴します…。

でもこの楽章、官能の世界と表裏一体とも思えるのですが…。


【第3楽章:Largo】

宇宙に存在するあらゆるものが、感覚的エネルギー感と化して表現されたような音楽。

そのエネルギー感に陶酔しつつ、悠久の平穏さへと誘われていくような、不思議な陶酔感に包まれる音楽です。

最近、シマノフスキーの音楽に、ちょっとだけ入れ込んでいます…。

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