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S.プロコフィエフ:バレー音楽『シンデレラ』全曲  

V.アシュケナージ指揮  クリーヴランド管弦楽団


フランスの詩人ペロー(1628-1703)の童話『シンデレラ』を題材にして、1944年に作曲されたバレー音楽。

バレーの粗筋は、皆様ご存知のシンデレラ姫の物語と殆ど変らないと思いますので、割愛させていただきます。


この物語は、絵本やディズニーの映画を通して見、聞きしていたのだと思いますが、いずれにしても幼い頃の記憶…。

「継母や二人の義姉に虐められる心優しい一人の少女と、彼女を幸せにする王子様の物語」という、メルヘンティックな固定観念が、未だにこびり付いています。

そんな感覚で全曲を聴くものですから、時に「感情移入が大きくって、何と大げさな表現!」と感じてしまう部分が、少なからずあります。

ただ、音楽的に魅力を感じるのが、そんな違和感を覚える部分であることは、何とも皮肉なもの…。

今、原作を読み返してみれば、プロコフィエフの表現に納得できるのかもしれません…。


【第1幕:第1〜19曲】

シンデレラがかぼちゃの馬車に乗って、城で開かれている舞踏会に出発するまでのシーン。

プロコフィエフらしく、美しく煌びやかで、時にウイット富んだ音楽が展開されます。

印象に残った曲を列挙しますと、

第4曲「(シンデレラの)父親」での、うだつの上がらない愚鈍な音楽。

第18曲「時計」での、恫喝とも感じられる強烈な音楽は「夜中の12時になれば、魔法が解ける!」という宿命を表現しているのでしょうか。

続く第19曲「舞踏会への出発」で聴かれる、儚さを湛えつつも、華麗で劇的なワルツは、心打たれるものです!


【第2幕:第20〜38曲】

舞踏会会場への到着から、夜中の12時になって、慌てて会場を去るまでのシーン。

第34曲では、自作の『3つのオレンジへの恋』からの有名な「行進曲」が引用されていますが、

圧巻は、第37曲の華麗なグランドワルツから、一転して緊迫感に包まれる第38曲…。

12時を告げる鐘が鳴り響く中、血相を変えて帰路につくンデレラの表情が眼前に髣髴出来るような、スリリングな音楽です!


【第3幕:第39〜50曲】

一夜明けて、城の会談に残されたガラスの靴いを手掛かりにして、ひたすらハッピーエンドへと向かう第3幕は、

全体的にはコミカルに描かれているように感じるのですが、

その中で、第49〜50曲にかけてのフィナーレ部は、

彼の代表作の一つとされる、

同じバレー音楽『ロミオとジュリエット』の「バルコニー」の場面から一皮むけたような、

ほのかに漂う官能的な美しさが印象的!


アシュケナージの演奏は、プロコフィエフ作品の持つ豊かな抒情性がいかんなく表出された、大変に魅力に溢れるたものだと思います。

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