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外 山 雄 三:交 響 詩 『ま つ ら』  

広 上 淳 一 指 揮  マ ル メ 交 響 楽 団


1982年に作曲されたこの曲は、

唐津市のクラシック音楽愛好家クラブから、「当地独自の作品を!」との声が発端となって、作曲家外山雄三氏に依頼されたとか。

氏が選ばれたのは、『管弦楽のためのラプソディー』の作曲者、という理由からだと推測しているのですが…。

尚、委嘱のための費用は寄付によってまかなわれたそうですが、

最初から、企業等の大口は当てにせず、

市民に対し「一人一口1000円のみ」という方針を貫いたとか。

最終的に、3000口以上の寄付が集まったそうです!


曲名の「まつら」は、唐津にある東松浦湾に沿った地域名のことらしく、

曲中に登場する懐かしさを覚える旋律は、

この地に伝わる“盆踊り歌”、“鯨捕り歌”、“わらべ歌”なのだそうです。


今日エントリーする広上淳一指揮するマルメ交響楽団の演奏からは、

地域特有の土俗性よりも、

むしろ西洋音楽の持つ雰囲気の中に、日本伝統の音楽をコラージュ風にはめ込んだもので、

洗練された曲の中から、懐かしい日本の抒情が浮かび上がってくるような音楽として、伝わってきます!


冒頭、弦とホルンが奏でる静かな音楽は、“盆踊り歌”。

海沿いの静かな集落の朝ののどかな雰囲気と、

爽やかな大気の香りを髣髴される、懐かしい音楽です!


弦によってカノン風に力強く盛り上がる、祭り囃子を思わせる音楽は“鯨捕り歌”。

この曲からは、祭りの雑踏の中に身を置くのではなく、

遠くから聞こえてくる賑わいを聞きながら、過ぎ去りし日々を懐かしむ、そんな趣が感じられます。


祭りの後の静寂の中に漂う“わらべ歌”は、

同じ九州民謡の「五木の子守歌」や「ひえつき節」のように、寂しくもの悲しさを帯びた調べ。

代表作『管弦楽のためのラプソディ』の土俗性とは異なった味わいを有した、

古き佳き時代の日本の心象風景を懐かしく思い出させてくれる、なかなかの佳曲だと思います。

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