唐津市のクラシック音楽愛好家クラブから、「当地独自の作品を!」との声が発端となって、作曲家外山雄三氏に依頼されたとか。
氏が選ばれたのは、『管弦楽のためのラプソディー』の作曲者、という理由からだと推測しているのですが…。
尚、委嘱のための費用は寄付によってまかなわれたそうですが、
最初から、企業等の大口は当てにせず、
市民に対し「一人一口1000円のみ」という方針を貫いたとか。
最終的に、3000口以上の寄付が集まったそうです!
曲名の「まつら」は、唐津にある東松浦湾に沿った地域名のことらしく、
曲中に登場する懐かしさを覚える旋律は、
この地に伝わる“盆踊り歌”、“鯨捕り歌”、“わらべ歌”なのだそうです。
今日エントリーする広上淳一指揮するマルメ交響楽団の演奏からは、
地域特有の土俗性よりも、
むしろ西洋音楽の持つ雰囲気の中に、日本伝統の音楽をコラージュ風にはめ込んだもので、
洗練された曲の中から、懐かしい日本の抒情が浮かび上がってくるような音楽として、伝わってきます!
冒頭、弦とホルンが奏でる静かな音楽は、“盆踊り歌”。
海沿いの静かな集落の朝ののどかな雰囲気と、
爽やかな大気の香りを髣髴される、懐かしい音楽です!
弦によってカノン風に力強く盛り上がる、祭り囃子を思わせる音楽は“鯨捕り歌”。
この曲からは、祭りの雑踏の中に身を置くのではなく、
遠くから聞こえてくる賑わいを聞きながら、過ぎ去りし日々を懐かしむ、そんな趣が感じられます。
祭りの後の静寂の中に漂う“わらべ歌”は、
同じ九州民謡の「五木の子守歌」や「ひえつき節」のように、寂しくもの悲しさを帯びた調べ。
代表作『管弦楽のためのラプソディ』の土俗性とは異なった味わいを有した、
古き佳き時代の日本の心象風景を懐かしく思い出させてくれる、なかなかの佳曲だと思います。