最近聴いたCD

カバレフスキー:ピアノソナタ第3番  

ベンノ・モイセイヴィッチ(ピアノ)


ロシアの作曲家カバレフスキー(1904-87)の作品で比較的知られている曲と言えば、管弦楽組強『道化師』の第2曲「ギャロップ」くらいでしょうか。

お聴きになれば、ほぼ全ての方が、子供の頃の運動会で場内に流れていた曲だと、記憶を新たにされることでしょう。

モスクワ音楽院時代から、芸術の大衆化を目指す集団に帰属し、一貫して判り易い音楽を書き続けた作曲家。

WIKIPEDIAで経歴を読んだ印象からは、旧ソ連の体制側にへつらって生き抜いた人。

権力志向が強く、作品はリアリズム路線に忠実で、通俗的と言われていますが、果たしてどこまでが真実なのでしょうか…。


今日エントリーする曲は、ピアノソナタ第3番は、ジダーノフ批判が開始される前年の、1946年に書かれた作品。

カバレフスキーも、当初は批判の対象とされていたといわれるだけに、

華やかな舞台の裏側を冷めた目で見据えた、聴き応えのある面白い作品だと思います。


モイセイヴィッチ(1890-1963)は、ウクライナ生まれのピアニストで、ラフマニノフを得意としていたそうですが、

人生の機微を詩的に紡ぎだす、そんな趣の演奏と感じられます。


【第1楽章:Allegro con moto】

いきなり華やかできらびやかな舞台を思わせるような音楽で開始されますが、

第2主題の諧謔的で荒んだ雰囲気は、ドガが描いた舞台裏の踊り子たちの表情を髣髴するような音楽です。


【第2楽章:Andante cantabile】

場末の盛り場のすえた臭いが漂う中、憂愁に覆われた人生を語るような、

そんな退廃的な雰囲気に覆われているように感じられるのですが…。


【第3楽章:Allegro giocoso】

華やかではあるのですが、諧謔味を帯びたこの演奏は、

その陰に隠された、複雑な人間模様を垣間見るような趣を有しています…。


聴覚に馴染み易い曲ですから、「ちょっと趣の異なった音楽を!」と思われた時に、お薦めできる曲だと思います。、

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