最近聴いたCD

W.A.モーツァルト:フルートとハープの為の協奏曲

リーザ・ベズノシューク(フルート)  フランシス・ケリー(ハープ)
C.ホグウッド指揮  エンシェント室内管弦楽団


1778年、モーツァルトは新しい職を見つけるために、

嘗て神童としてもてはやされた想い出深いパリを12年ぶりに訪れましたが、

既に二十歳を過ぎた彼に注がれた聴衆の芽は冷ややかで、

生活の資を得るためにピアノや作曲の家庭教師として、細々とした生活を送らざるを得ませんでした。


そんな折に、ド・ギーヌ公爵という人物が、自身と、モーツァルトが作曲を教えていた彼の令嬢の為に、フルートとハープのための協奏曲を書くように依頼しました。

当時のフルートは構造が不安定で、正しい音程を採ることができないこと、

ハープもまた楽器として不完全なものだったようで、

モーツァルト自身あまり気乗りしなかったようですが、

生活の糧を得るために、やむを得ず作曲に取り組みました。

そういった経緯で書かれたにもかかわらず、

完成されたこの曲は、彼の全作品中でも、最も華麗で美しく、かつ雅な気品に富んだ曲として、高い人気を誇っています!


余談ですが、この公爵は狡知に長けた人物だったらしく、

思うように職が見つからないモーツァルトの足元に付け込んで、令嬢の授業料は約束の半分しか支払わず、

且つこの曲の作曲料に至っては、完全に反故にされたとか…。


今日エントリーするディスクは、この曲が書かれた当時に使われていた弦楽器やフルート、ハープを使って演奏されたもの。

しかしながら、モーツァルトが意図した音色を再現した、単なる時代考証的な価値だけでなく、

華麗さよりも、むしろ「鄙びた」と言った方がよさそうな音色が醸す雰囲気は、

私が聴いた中では最も穏やかで気品に満ちた、美しい演奏だと感じるのです。


【第1楽章:Allegro】

淀みなく流れるオーケストラの伴奏に乗って、

フルートの素朴な音色と、ハープの繊細で爽やかな響きが絶妙にマッチングした演奏が展開されます。


【第2楽章:Andantino】

手探りするようにそっと始まり、

2つの楽器が寄り添うようにして美しく語り合う、そんな趣が感じられる演奏です。

心地良い風に吹かれながら草原に佇むような、爽やかさ!


【第3楽章:Rondo(Allegro)】

2つの楽器が活き活きと飛び跳ね、囁き合うような、愉悦感に溢れた快活な楽章!

全楽章を通じて、フルートとハープの空間にたなびく残響の美しさが印象的な録音でした!

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