自己のスタイルを築きつつある時期に書かれたもので、
フランクの影響を表わす循環形式を採りながらも、
大胆なハーモニーや、絶えず変化し続ける色彩感が盛り込まれており、
これまでになかった新しい境地を開いた、近代弦楽四重奏曲の最高傑作と評価されています。
30年以上前にLPで聴いていたラサール四重奏団の演奏では、
第1楽章冒頭の摩訶不思議な雰囲気を醸す音色、
2楽章の躍動感、
第3楽章の官能的な美しさ、
そんな印象が、今も強く焼き付いています…。
今日エントリーするアルカント四重奏団による演奏を聴いて、当時のそんな印象が蘇ると同時に、
この作品の特長とされる多様な色彩感が、時に自然な流れの中で、時に唐突にと、めまぐるしく変化しつつも、
決して無秩序にではなく、極めて明晰な印象として伝わってきます。
第1楽章:活気をもって&極めて決然と
この楽章でのアルカントの演奏は、音色の変化を抑制しているためか、モノクロームの世界が展開されます。
それは、恰も麓から立ち昇る雲にたちまちのうちに覆われて、
激しい大気の流れや、明暗の変化の中に佇むような、大変に印象的な演奏!
第2楽章:かなり急速に&とてもリズミカルに
ピッチカートを伴なってヴィオラが奏する主題は、前楽章から一転して豊潤なもの…。
グラスに注がれた上質なシャンパンを思い浮かべ、胸躍るような悦びが感じられます…。
第3楽章:穏やかに、表情豊かに
けだるい憂鬱さを独白するヴィオラの響き。
愛おしさがこみあげるような、中間部の旋律。
芳しい色香が立ち昇る都会の夜の静寂を表現したような、官能的音楽と感じます。
第4楽章:非常にゆっくりとー非常に活き活きとー少しづつ動きをつけてー極めて躍動して、かつ情熱的に
霞の中から立ち昇るようなチェロの述懐…
鬱々として解決されない胸の内…
はかなく漂う幻を追うようなヴィオラの響き…
やがて第1楽章で提示された循環主題が霞の中から立ち昇るように回帰し…
解決に向かって、力強く情熱的に曲は終了します。
記憶に残るラサールの名演と比較しても、より一層踏み込んだ解釈がなされているように思うのですが、
でも、ラサール盤も、もう一度聴いてみたい衝動に駆られています。