最近聴いたCD

C.ドビュッシー:弦楽四重奏曲 ト短調 

アルカント四重奏団


ドビュッシーが30歳になった1893年に完成された、唯一の弦楽四重奏曲。

自己のスタイルを築きつつある時期に書かれたもので、

フランクの影響を表わす循環形式を採りながらも、

大胆なハーモニーや、絶えず変化し続ける色彩感が盛り込まれており、

これまでになかった新しい境地を開いた、近代弦楽四重奏曲の最高傑作と評価されています。


30年以上前にLPで聴いていたラサール四重奏団の演奏では、

第1楽章冒頭の摩訶不思議な雰囲気を醸す音色、

2楽章の躍動感、

第3楽章の官能的な美しさ、

そんな印象が、今も強く焼き付いています…。

今日エントリーするアルカント四重奏団による演奏を聴いて、当時のそんな印象が蘇ると同時に、

この作品の特長とされる多様な色彩感が、時に自然な流れの中で、時に唐突にと、めまぐるしく変化しつつも、

決して無秩序にではなく、極めて明晰な印象として伝わってきます。


第1楽章:活気をもって&極めて決然と

この楽章でのアルカントの演奏は、音色の変化を抑制しているためか、モノクロームの世界が展開されます。

それは、恰も麓から立ち昇る雲にたちまちのうちに覆われて、

激しい大気の流れや、明暗の変化の中に佇むような、大変に印象的な演奏!


第2楽章:かなり急速に&とてもリズミカルに

ピッチカートを伴なってヴィオラが奏する主題は、前楽章から一転して豊潤なもの…。

グラスに注がれた上質なシャンパンを思い浮かべ、胸躍るような悦びが感じられます…。


第3楽章:穏やかに、表情豊かに

けだるい憂鬱さを独白するヴィオラの響き。

愛おしさがこみあげるような、中間部の旋律。

芳しい色香が立ち昇る都会の夜の静寂を表現したような、官能的音楽と感じます。


第4楽章:非常にゆっくりとー非常に活き活きとー少しづつ動きをつけてー極めて躍動して、かつ情熱的に

霞の中から立ち昇るようなチェロの述懐…

鬱々として解決されない胸の内…

はかなく漂う幻を追うようなヴィオラの響き…

やがて第1楽章で提示された循環主題が霞の中から立ち昇るように回帰し…

解決に向かって、力強く情熱的に曲は終了します。

記憶に残るラサールの名演と比較しても、より一層踏み込んだ解釈がなされているように思うのですが、

でも、ラサール盤も、もう一度聴いてみたい衝動に駆られています。

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