高校生の頃、重厚長大な曲を好んでいた私が、最もよく聴いた、想い出深い曲の一つです。
ブルックナーと言えば、某評論家先生のご薫陶のたまもので、
嘗てはクナッパーツブッシュやシューリヒト、近年では朝比奈隆やヴァントの演奏を外すわけにはいかないのでしょうが…。
ただ、この曲だけは、1966年のカラヤン/ベルリンフィルの来日公演をTVで観、聴いた時から彼の演奏が好きで、
30歳代の後半までは、最も大らかな気持で鑑賞できる演奏として、ベルリンフィル盤をしばしば採り出したものでした。
新年を迎えるにあたり、この一年こそおおらかな気持で過ごせるようにとのささやかな願いを込めて、カラヤン最晩年のウィーン・フィル盤を選んだ次第です。
彼の演奏は、しばしば「恣意的」と評されますが、私も時にそのように感じる演奏に遭遇しています。
しかし、カラヤンはこの曲とはよほど相性が良いのでしょうか。
全てが自然な流れとして、心に沁み入ってくるように感じています。
第1楽章:Allegro moderato
巧まずして流れる自然体のフレーズ、
蠱惑的とも感じられる弦の音色、
夢見るように空間に浮遊する木管のパストラールな響き、
決然とした意志を感じさせる金管の強奏やティンパニーの強打…。
のびやかで力強く、穏やかな大自然の中で生きる悦びに溢れた、素晴らしい演奏です。
第2楽章:Scherzo.Allegro moderato―Trio.Largetto
砂塵を蹴立てて力強く疾走する騎馬民族を彷彿とするスケルツォ部は、器用に生きられなかったブルックナーの、英雄的行為への憧れを表現したもの?
トリオ部では、まどろみの中でロマンを追う、儚ない美しさが感じられます…。
第3楽章:Adagio.Feierlici langsam,doch nicht schleppend
幸せを希求するブルックナーの心の内が、しみじみと語られるようなこの楽章。
懐かしい想い出や、未来への憧れが、信仰へと繋がり、
いつしか宗教的な法悦に達する、そんな趣が感じられる、心が洗われるような美しい演奏です。
第4楽章:Final.Feierlich,nicht schnell
ブルックナーの力強い意志と、自然に感謝する感謝の気持ちが、しみじみと感じられる音楽。
夕陽に映える森や林、小鳥たちの囀りなど、森羅万象に心を打ち震わせる感慨がとりわけ印象的!
壮大さと繊細さが見事にブレンドされた、素晴らしい曲であり演奏だと思います!