最近聴いたCD

J.ブラームス:ハンガリー舞曲集(独奏ピアノ版) 

ピアノ:ジュリアス・カッチェン


1850年代の初め、ブラームスがハンガリーのヴァイオリニスト、エドゥアルト・レミーニの伴奏ピアニストとして随行していた折に、

彼からロマの音楽を紹介されたのを契機に、それらを採譜し、編曲して出版した舞曲集。

全4集21曲から成るこの曲集は、もとはピアノ連弾用に書かれたものですが、

後にブラームス自身や、様々な作曲家・演奏家によって、それぞれの曲がオーケストラ版、ヴァイオリン&ピアノ版、独奏ピアノ版等に編曲されました。

私は、これまでオーケストラ版でしか聴いた記憶がないのですが、

今日初めて、J.カッチェンのピアノ独奏で、第1〜10番(ブラームス自身が編曲)を聴き、印象の違いに驚きました…。


これまで馴染んできたオーケストラ版…、

民族的な憂愁を湛えた美しい旋律や、情熱的な躍動感に満ちた、素晴らしい音楽です。

ただ、民族的な舞曲でありながら、土俗的な印象は希薄で、

「ちょっと余所(よそ)行きの音楽」との印象を抱いていました。

一方、ピアノ独奏版で聴くこの曲集は、村の広場で繰り広げられる人々の踊りで、

汗が飛び散るような激しい躍動感や、

喜怒哀楽の表情までが露わに感じられる音楽です!

例えば第1、2番では、仄暗さを帯びた響きが醸す深い憂愁が…

第3番では、愛らしさが際立つ主部と、中間部では一転して誇らしげな民族舞曲が…

第4番では、さめざめと涙を流すような悲しみを湛えた主部と、愉悦感に溢れた中間部との対照の妙等々…

ただ、最も人気のある第5番は、「オケ版の方が良くできているなぁ」とは思いましたが…。


カッチェンの演奏は、民族的憂愁を色濃く表現すると同時に、

ヴィルトゥオーゾぶりを如何なく発揮することによって、

曲が内包するのであろう土俗的な躍動感や愉悦感が、如何なく表現されています!


初めてピアノ独奏版を聴いた後に、あらためてオケ版を聴いて、

「10万人収容する大競技場の、フィールドで繰り広げられるマスゲームを、スタンドから俯瞰するような趣のものだなぁ」と思いました…。

一方、ピアノ独奏版で聴くこの曲集は、

村の広場で繰り広げられる人々の踊りで、汗が飛び散るような激しい躍動感や、喜怒哀楽の表情までが露わに感じられる音楽!

その違いに驚くとともに、あらためて「良い曲だなぁ」と感じ入った次第です!


一年間、ありがとうございました。

皆さまには、どうぞ良いお年をお迎えください。

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