確かにこの曲には、彼の作品の特長とされる、高い気品と奥深い表現力を兼ね備えた旋律や、
荘厳かつ神聖さを湛えつつも、時に官能的なほころびを感じさせる、独特の美しい響きを有しており、
フランクならではの個性的な魅力を湛えた、後期作品の一角をなす代表作の一つでしょう。
この曲の素晴らしさを知ったのは、1929年録音のコルトーの演奏でした。
信仰or愛を希求するかのように、燃えたぎる情熱が全曲を通して迸る、敬虔さと清らかなロマンチシズムに溢れた演奏は、今CDで聴いても素晴らしいものですが、
唯一の欠点は、ノイズが…。
そこで、情熱的に開始されるコルトー盤とは好対照に、静謐さを湛えながら開始されるボレット盤をエントリーすることにします。
「前奏曲」は、磨き抜かれた繊細なタッチで奏されるアルペッジョは、清らかな水の流れを思わせるように、静謐さを湛えながら開始されます。
これと併行するように、深く静かに巡らされる思いは、次第に深化していきます…。
思索する悦びを感じさせるような前奏曲です!
「コラール」は、前奏曲部で高みに導かれた悦びを、しみじみと語り、さらに高揚していくような音楽。
繊細なピアノの響きは、あたかも水琴窟に滴る、微かで透明な水音色を思わせる清らかさ!
中間部では、見果てぬ夢を求めるように逍遙しつつ、
後半部は、一歩づつ信仰の核心へと迫るような、そんな趣を感じさせながら、フーガ部へと突入します。
「フーガ」は、いきなり力強い意志を示すように主題が提示された後は、瞑想の森に迷い込んだように音楽は逍遙しますが、
やがて彼方に見える灯火に向かうかのように高揚していき、圧倒的な悦びに包まれながら、曲は終わります。
「宗教的法悦って、こういうものかな!」と、ふと感じさせる瞬間でした。