胴がギターに似ていて、
チェロ小ぶりにしたような、
弓を用いて演奏する6弦の楽器。
この曲は1824年、勿論この新しい楽器の為に作曲されたものでしたが、
楽譜が出版されたのは、シューベルトの死後40年以上が経過した1871年。
その頃には、既にこの楽器は廃れていたために、アルペジョーネによって演奏される機会はなかったそうですか、
これに替えて、チェロやヴィオラで代用されることによって、幅広く知られるようになりました。
この曲を書いた当時のシューベルトは、金銭的に恵まれず、その上健康上の不安を抱えて、心身ともにる大きな危機を迎えていました。
親しみやすい優しい旋律であるにもかかわらず、曲の底辺に、そこはかとなく不安感や寂寥感が漂よっているのは、そんな理由によるのでしょうか…。
マイスキーのチェロと、ダリア・オヴォラという女性ピアニストによる、シューベルトの良く知られた歌曲を集めた“Songs without Words”というアルバムに収録されている演奏をエントリーします。
密やかに、しかし思いの丈を込めて歌われるマイスキーのチェロの響きが、この曲にピッタリだと思えるからです。
第1楽章:Allegro moderato
ピアノを引き継いで、チェロの奏する第1主題の密やかな美しさ!
即興的で、テンポの変動の大きい演奏だと思うのですが、
フォルテ部分では激情に駆られることなく、
ピアノ部分では決してナルシシズムニ陥ることのない演奏からは、
心に閉じ込められた思いが、ふと口を吐くような、そんな趣が感じられるのです!
第2楽章:Adagio-
焦がれるような心情を静かに吐露するように、しみじみと紡ぎだされていく旋律の美しさ!
ひとときの安らぎに包まれながら、しばしノスタルジーに耽るような、
そんな思いが抱ける美しい楽章であり、演奏だと思います。
第3楽章:Allegretto
快活なテンぽで奏されるチェロの響きから、不安や悲しみが突きあげてくるこの楽章。
テンポを即興的に揺らしながらも、抑制された表現を貫くマイスキーのチェロからは、
時に、束の間の安らぎが聴き取れるようにも感じられます。
シューベルトの歌曲の延長として捉えたのであろうこの演奏、興味深く、そしてしみじみとした感慨を抱きながら聴くことができました!