1904年にシェーンベルクに師事する前後の初期作品には、後期ロマン主義音楽の影響が色濃く反映されています。
彼が自作に初めて作品番号を付けたのは、シェーンベルクの薫陶を受けて作曲した『管弦楽のためのパッサカリア』。
そのために、自身で若き日の作品を習作と見做し、作品番号さえ付けていません。
残された数多くの習作が、ようやく陽の目を見たのは、ウェーベルンの死後。
音楽学者のハンス・モルデンハウアーによって紹介・出版されるまでは、人々に知られることはありませんでした。
この曲もそんな一つで、1905年に作曲されたものの、初演されたのは57年後の1962年のこと。
作曲家自身は、世に出ることを不本意と考えていたために、作品番号を与えなかったのでしょうが、
今日初めて聴いたこの作品は、ブラームス的なロマンの香りが漂い、
プッチーニの弦楽四重奏曲「菊」を思い浮かべるような、美しく物悲しい旋律に溢れた佳曲です!
冒頭のエレジー風の旋律は、過ぎ去りし日々への愛惜と追慕の情に溢れた、気高いまでに美しいもの…。
青春時代特有の感傷なのでしょうが、還暦を過ぎた私の心の琴線に触れ、ノスタルジーを蘇らせてくれます。
そして、磨き抜かれた楽器ごとの美しい音の一粒一粒は、それぞれに豊かなニュアンスがこめられており、インスピレーションに溢れたもの!
その点が、後期ロマン派の作品と異なる所かと、感じました。
シマノフスキーの弦楽四重奏曲第1、2番とカップリングされたディスクです。
本当に美しいこの曲、機会があれば、是非ともお聴きになってください!