最近聴いたCD

A.ウェーベルン:弦楽四重奏の為の緩徐楽章 

カルミナ四重奏団


シェーンベルクやベルクと並ぶ新ウィーン学派の中核メンバーとして、20世紀前半の楽壇で最も前衛的な作風を展開したと言われるウェーベルン(1883-1945)ですが、

1904年にシェーンベルクに師事する前後の初期作品には、後期ロマン主義音楽の影響が色濃く反映されています。

彼が自作に初めて作品番号を付けたのは、シェーンベルクの薫陶を受けて作曲した『管弦楽のためのパッサカリア』。

そのために、自身で若き日の作品を習作と見做し、作品番号さえ付けていません。

残された数多くの習作が、ようやく陽の目を見たのは、ウェーベルンの死後。

音楽学者のハンス・モルデンハウアーによって紹介・出版されるまでは、人々に知られることはありませんでした。


この曲もそんな一つで、1905年に作曲されたものの、初演されたのは57年後の1962年のこと。

作曲家自身は、世に出ることを不本意と考えていたために、作品番号を与えなかったのでしょうが、

今日初めて聴いたこの作品は、ブラームス的なロマンの香りが漂い、

プッチーニの弦楽四重奏曲「菊」を思い浮かべるような、美しく物悲しい旋律に溢れた佳曲です!


冒頭のエレジー風の旋律は、過ぎ去りし日々への愛惜と追慕の情に溢れた、気高いまでに美しいもの…。

青春時代特有の感傷なのでしょうが、還暦を過ぎた私の心の琴線に触れ、ノスタルジーを蘇らせてくれます。

そして、磨き抜かれた楽器ごとの美しい音の一粒一粒は、それぞれに豊かなニュアンスがこめられており、インスピレーションに溢れたもの!

その点が、後期ロマン派の作品と異なる所かと、感じました。

シマノフスキーの弦楽四重奏曲第1、2番とカップリングされたディスクです。

本当に美しいこの曲、機会があれば、是非ともお聴きになってください!

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