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ベートーヴェン:『レオノーレ』序曲第3番 

オットー・クレンペラー指揮  フィル・ハーモニア管


ベートーヴェン唯一のオペラ『フィデリオ』は、フランスのトウーレーヌで実際に起こった事件を題材に書かれたジャン・ニコラス・ブイイの小説『レオノール、または夫婦愛』を基に作曲されました。

粗筋は、政敵の策略によって無実の罪で投獄された夫を救うために、妻レオノーレが、男装してフィデリオと名乗り、牢番の部下となって、

夫が暗殺される直前に身を挺して救出するという、女性の英雄的行為を讃美する内容!


このオペラが現在の形に落ち着くまでに、ベートーヴェンは台本も含めて2度の大改訂が行われていますが、その度に序曲も書き直されています。

1805年に書き上げられた初稿では、『レオノーレ序曲第2番』が使われたとされていますが、

不評のために大改訂を施し、翌年に上演された第2稿では『第3番』が、

そして1814年の最終稿以降は、『フィデリオ序曲』が使われるようになりました。

尚『第1番』は、ベートーヴェンの死後に遺品の中から発見されたもので、

1805年の第1稿初演に際して書かれたとも、

1807年に第2稿がプラハで上演される際に書かれたとも言われていますが、

いずれにしても作曲者自身が気に入らずに、一度も演奏されることなく御蔵入りになったようです。

尚、作曲者自身、オペラ名を『レオノーレ』に拘ったようですが、

同じ題材を基に書かれた『レオノール』『レオノーラ』という先行作品が存在し、紛らわしかったため、

結局は『フィデリオ』にすることで、納得したとか。

3曲中最も壮大で、内容的にも充実した作品と評価され、コンサートで演奏される機会が最も多い作品!


エントリーするのは、クレンペラー/フィル・ハーモニア管による1963年の録音です。

雄渾と言うに相応しいこの演奏からは、ベートーヴェンが理想としたのであろう壮大なロマンが、随所に滲み出ています。

常に身分の高い女性に憧れを抱いていたという彼の理想の女性像とは、

自分に対してレオノ-レのように忠実な愛を全うしてくれる人だったのでしょうか…。

そんな憧れにも似たロマンが、が有無を言わさずに伝わってくる、大変に説得力の強い名演だと思います。

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