ローマに在る4つの噴水のそれぞれの特徴が、周囲の風物と最もよく調和する時間帯が選ばれて、描き分けられています。
R.コルサコフの色彩感や、ドビュッシーの印象主義的な手法が随所にちりばめられたこの作品。
誰の演奏を聴いても、それなりの感動を得られる演奏効果の秀いでた曲と思っていましたが、
意外にも初演時の評判は芳しくなく、
その後トスカニーニが指揮することによって、初めて真価が認められたとか…。
あらためて何種類かの演奏を聴き比べてみましたが、
トスカニーニの演奏は、決して甘美な情緒におぼれることなく、音に全てを語らせる求心力の強いもの!
光り輝く水飛沫の様子や、それによって自ずと醸し出される幻想性が鮮やかに描き出された、比類のない演奏であることを、あらためて認識した次第です!
第1曲:夜明けのジュリアの谷の噴水
オーボエによる瑞々しく爽やかに歌われる旋律と、それに優しく応えるチェロ!冷涼な大気に包まれた、夜明けの清々しい雰囲気が漂います。
第2曲:朝のトリトーネの噴水
太陽が昇り、朝陽を浴びて眩いばかりに輝く水飛沫が、スピーカーから飛び出してくるかと思うばかりに瑞々しく、感動的な音楽。
一気に頂点にまでクレッシェンドする緊張感溢れる演奏は、トスカニーニの真骨頂!次の第3曲とあわせて、超弩級の名演だと思います!
第3曲:真昼のトレヴィの泉
けだるい昼下がり、こんこんと湧き出る泉に、ふと古のローマの歴史を思い浮かべるかのような、白昼夢の世界が展開されていきます。
過剰な感傷を一切排した演奏からは、逆に曲に込められた壮大なロマンが迸る、まさに唯一無二の名人芸と言える演奏!
第4曲:黄昏のメディチ荘の噴水
ちょっと物憂げで、詩的情緒に溢れた美しい作品。
鳥の囀り、木々のざわめき、教会の鐘の音…。
静寂の中、ハープとチェレスタが奏でる水音…。
古代ローマやルネサンス期の栄華を偲ぶノスタルジーに満ちたこの曲を、トスカニーニは比肩するものがないほどに、鮮やかに描き尽くしています。