今日エントリーする二重小協奏曲は、イタリアの放送局から依頼を受けて書かれた独奏クラリネットとファゴット、弦楽合奏(ハープ付)のための作品。
構想の時点では、アンデルセン童話(「王女と熊」「王女と乞食」など諸説あり) のストーリーに基づいて、2つの楽器にそれぞれの役割を受け持たそうと考えたそうですが、
作曲が進むにつれて、標題性は排除されたとか。
曲の底には、第二次世界大戦の敗戦で瓦礫の山と化した祖国ドイツが、
復興へと立ちあがる姿を見る、最晩年のR.シュトラウスの清明な心と、密やかな喜びが静謐さの中に流れており、
構想時に考えられたというストーリー性は、全く感じられません。
今日エントリーするのは、プレヴィン指揮するウィーン・フィルの演奏…。
第1楽章:Allegro moderate
弦楽合奏と独奏クラリネットが醸す静謐な雰囲気は、牧歌的な穏やかさを湛えたもの。
瞬時にシュトラウスの美しい世界へと惹き込まれる、素晴らしい冒頭部です!
クラリネットが光の明の部分を、
ファゴットが暗の部分を描くかのように、
絡み合いながら展開されていく第1楽章は、
黄昏時の移ろいゆく色彩の変化をさせる趣の深い音楽.。
次第に静まりながら、やがて夜の帳が下りるように第2楽章へ…。
第2楽章:Andante
静寂の中に歌われるファゴットの響きの美しいこと!
楽器の音色の特質を活かした、極上の安らぎのひとときが実感できます。
クラリネットの響きは、ナイチンゲールの囀りでしょうか…。
第3楽章:Rondo.Allegro ma non troppo
互いに歌い交わす木管楽器に弦楽オーケストラが絡みながら、三位一体となって展開されていくこの楽章は、次第に穏やかな喜びに包まれていく趣が…。
終戦を間近に控えた1945年、瓦礫の山と化した祖国ドイツの惨状を目の当たりにして『メタモル・フォーゼン』を書いた作曲家が、
老いてなお、悲しみの中にもポジティブに生きる姿を見るような、終楽章です。
プレヴィンの指揮、ウィーン・フィルの演奏は、静謐さの中に、微妙に移ろいゆく色彩感が表現された素晴らしいもの。
カップリングされている2つのホルン協奏曲、オーボエ協奏曲共々、是非お勧めしたい名演だと思います!