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E.グリーグ:劇付随音楽『十字軍の王シグール』

シェル・マグヌス・サンヴェー(テノール) プロ・ムジカ合唱団
ネーメ・ヤルヴィ指揮  エーテボリ交響楽団


ノルウェーのビョルソン(1832-1910)によるこの戯曲は、12世紀のノルウェー王国の統治者だったシグールとオイスティン兄弟と、

オイスティンを愛しつつも、兄シグールから愛を告白されて、葛藤に悩む美しい娘ボルグセルが絡んだ物語。

現在では上演されることが殆どないようで、

粗筋についても、輸入盤のラーナーには記載されておらず、ネットでも検索出来ませんでしたので、曲解説を寄せ集めて、判る範囲で書かせていただきます…。


グリーグが残した曲は、全部で9曲ありましたが、現在では彼自身が組曲として選んだ3曲が演奏されるのみ、

しかしヤルヴィの演奏では、全9曲が収録されていますので、こちらをエントリーすることにしました。


第1曲:ファンファーレ
ノルウェイのフィヨルド渓谷にこだまするホルンの牧歌的な響きからは、澄み切った冷涼な大気が彷彿されるよう!

第2曲:前奏曲
気高く、て堂々とした音楽は、王位を継ぐであろう二人の若者の威厳を表現したものか、
それとも中世騎士道精神を示すものなのでしょうか。

第3曲(組曲の2曲目):ボルグヒルの夢
暗く悲劇的で、何かに追い立てられるような音楽は、思いが伝わらないもどかしさ?
それとも、不吉な将来の予兆?

第4曲(組曲の1曲目):力比べ(王宮の広間にて)
シグールとオイスティンの、どちらが王としての力量に優れているかを決定するための会場。
自信満々の意気揚々とした音楽は、二人の入場を、
中間部の、木管が歌い交わす優美な音楽は、ボルグヒルを表わす音楽…。

彼女は、どちらが王としてふさわしいかを判定する、重要な役割を担って、会場に臨席しているのです。
しかし、愛するオイスティンを王とすれば、十字軍遠征の長として別れねばならないために、シグールが優れていると判定…。
それによって、シグールが王位に就くことになります。

第5曲:北国の民
テノールと男声合唱による、一点の曇りもない力強く朗々とした音楽は、十字軍遠征に赴く決意をした王シグールや部下たちの純粋な志が伝わってくるよう…。

第6曲:忠誠行進曲(組曲の3曲目)
比較的良く耳にするこの曲は、いかにも王国の音楽と思えるような、誇りと威厳に溢れたもの。
エルガーの「威風堂々第1番」と重なって聴こえてきます。

第7、8曲:間奏曲T、U
第6曲と同じ、忠誠行進曲の旋律が登場しますが、特に第8曲の中間部は、いかにもグリーグらしい、ノルウェーの美しい抒情に溢れた音楽です。

第9曲:王の歌
冒頭のエキゾティックな旋律は、十字軍として聖地エルサレムへ赴く夢を彷彿させるもの…。
聖地の奪還、延いては自国の平和と繁栄の成就を願う、若きノルウェー国王の決意が朗々と歌われ、国王兄弟を讃える男声合唱出、幕を閉じるようです。


ヒロイズムに溢れた、愛国的色彩の濃い作品ですが、

組曲には収載されていない曲に、覇気に満ちた若々しさや、北欧ノルウェーらしい抒情が聴ける作品。

ペールギュント完全全曲版とカップリングされていますので、機会があれば是非お聴きになってください!

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