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フランク・マルタン:小協奏交響曲

A.ジョルダン  スイス・ロマンド管弦楽団


フランク・マルタン(1890-1974)は、ジュネーブに生まれたスイス人作曲家。

20年ほど前に、運転中にFM放送で耳にした時に、

チェンバロやらピアノやらが、背筋が薄ら寒くなるような、冷たーい不思議な音色で鳴るのを聴いて鮮烈な印象を受けました。

アンセルメ指揮するスイス・ロマンド管の演奏、

曲名までは記憶できませんでしたが(後年、「7つの管楽器、ティンパニ、打楽器、弦楽のための協奏曲」と判明)、その時に初めて、この作曲家の存在を知り、興味を抱きました。


エントリーするのは。スイス生まれのジョルダン指揮するスイス・ロマンド管の演奏です。

第1部:Adagio-Allegro con moto

原始的な呪術を思わせるように、神秘的で不気味な雰囲気を湛えた冒頭Adagio部。

弦の響きは、凍てつくような暗闇の中で僅かに動く大気の気配を表現するようで、大変に繊細で印象的!

Allegro部に入ると、ピアノ、チェンバロ、ハープの響きがそれぞれに、時に重なり合って、シャーマンの世界を思わせる不思議な音楽が展開され、やがてエクスタシーへと達します…。

それが鎮まり、闇に漂うようなチェンバロやハープの爪弾きは、哀愁に満ちたもの。

不思議な余韻を漂わせつつ、休みなく第2部へ…。


第2部:Adagio-Allegro aiia Marcia

ハープとチェンバロが奏する爪弾きは、ハンガリーの民族楽器(ツェンバロン)の音色のよう…。

ロマの宿命的な悲哀を物語るように(全くの個人的な印象ですが)、情緒は高まります。

チェンバロがAllegroのテンポへと速度を増していくところは、今までの呪縛から解き放たれたかのような軽やかさが…。

次第に盛り上がっていき、独奏ピアノやチェンバロによって、ラグタイムやジャズといったノリの良い即興的な音楽が繰り広げられつつ、

一切の呪縛を振り切ったかのように、終曲へと向かっていきます。


どこか示唆的で、魅力に富んだ音楽だと思います。

もしマルタンの作品をお聴きになっていなければ、ご一聴されることをお薦めします。

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