一躍、その名は世界中に知れ渡るようになりました。
シューマンは、この『歌の本』に興味を抱き、
この中に含まれている、報われぬ恋の苦悩をテーマにした「若き悩み」という詩集の中から9篇を選び、
失恋した若者の心をストーリー化した作品が、『リーダー・クライス』op.24。
作曲された1840年は「歌の年」と呼ばれ、総数で140曲にものぼる歌曲が誕生、
代表作の多くも、この年に集中しています。
今日エントリーするのは、シュライヤーのテノール、シェトラーのピアノによるもの。
第1曲:朝起きて、自問する
しばらく会えない恋人に、今日こそは合えると、心軽やかに胸ふくらませる、爽やかで愛らしい曲
第2曲:私は苛立って
今すぐに会いたいのに、時の経過の遅さをもどかしく感じる熱い気持が伝わってきます
第3曲:私が木陰を歩いていると
鳥の声さえもが、恋人の歌声に聴こえるのでしょうか。
大切な想い出を慈しむように歌われるこの曲、ピアノが絶妙なエンディング…。
第4曲:いとしい恋人、君の手を僕の心臓に
優しく呼び掛けるような歌唱ですが、詩は自虐的な内容
第5曲:私の悲しみの美しい揺り籠
恋人から別離を言い渡された男が、それでも尚愛おし思いが捨てきれず、
一縷の望みを信じて、必死に動揺を抑えようとする切い心…。
シュラーヤーの、葛藤する心を切々と表現する歌唱と、絶望の余韻を漂わせるピアノ…。
素晴らしい曲であり、演奏です!
第6曲:待て、待て、荒々しい船乗りよ!
悲しみを吐き捨てるような、自暴自棄な音楽。
第7曲:山と城が見下ろしている
大らかに朗々と歌われるこの曲は、詩の内容を考えれば、平静を装っている男の姿…ということなのでしょうか。
第8曲:はじめから望みもなく
完膚なきまでに打ちひしがれた真情が、力なく歌われます
第9曲:ミルテとバラを持って
吹っ切れて、光明が見えてくるような音楽。張り裂けるような悲しみもやがては昇華されて、甘く切ない想い出となるの尾でしょうか。
若者の一途さと、それ故に屈折する心情を表現した歌唱は、シュライヤー盤(1972年録音)が、群を抜いていると感じます。
この曲集にいまいち物足りなさを感じておられる方は、是非ご一聴をお薦めします!、